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DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 ◆devil5UFgA メシア教傘下の教会の一室。 いつものように、祈りを捧げる青年へと至ろうとしている少年が居た。 法衣は纏っていないが、しかし、法衣を連想させる白い服を着ている。 片膝を突き、無心に神へと何かを捧げる。 彼が時間さえあれば祈りを捧げていることを、この教会に通うものならば誰もが知るものだった。 そう、この教会に通うものは誰もが彼のことを知っている。 優しく、穏やかで、恐らく、最も心の清らかな人物。 『メシア教』があるべき信徒の姿を教科書に載せるとすれば、彼の姿がそこにはあるだろう。 彼の名を知るものは、この場に居ない。 教会に通う信仰を胸に抱く人々は、ただ、彼のことを『先生』もしくは『牧師様』と呼ぶ。 そんな彼――――『ロウヒーロー』は、たった今、神へと捧げている祈りに、平時の祈りでは混じり得ない異物を感じていた。 この紅い月に導かれた東京の人々が抱くロウヒーローへの評価は真実ではあったが、偽りでもあった。 ロウヒーローのそれは、一度は天使に導かれただけのものだった。 彼の者の優しき心に生じるはずのない選民の意思。 それは天使に植え付けられたものだろうか。 違う。 ロウヒーロー自身が拒絶する。 あの選民の意思は、『優越』という感情は。 己自身が抱いたものだ。 恥ずべき想いだった。 もしも、ロウヒーローがそんな感情を抱いていないのだとしたら。 『なぜ、僕は彼女の顔を――――』 眉をひそめ、連想する顔があった。 その顔を、連想しない日々があった。 様々な想いを胸に秘めたまま、ロウヒーローは顔を上げ、十字架へと背を向ける。 「おや……おはようございます、一郎くん」 「おはようございます、牧師様。 邪魔をしては悪いと思って、待っていました」 すると、そこには一人の少年が立っていた。 『松下一郎』、天才的頭脳を持つ人智を超えた存在だ。 かつて、偽りとはいえ救世主であったロウヒーローですら、異常であると感じる少年。 隠し切れない才覚というものがある。 ぎょろりとした『目』は、こちらの心を見透かしているかのような、不気味なものだった。 だが、不快なものではなかった。 もしも、それを不快に感じるとするのならば。 それは妬みから生まれるものだ。 己の届かないものに対する妬み。 恐らく、松下一郎は別のものを見ている。 そのことに対する、妬み。 松下一郎が、東京でメシア教の元に住む前の住居、奥軽井沢では『悪魔くん』と呼ばれていた。 悪魔的頭脳を持った精神的異能児。 人はそんな少年を神とは呼ばず、悪魔と呼んでいた。 「いえ、気を使わせてしまったようですね」 ロウヒーローは、胸の中から生まれる正体不明のものを誤魔化すように口にした。 空っぽではないと、己を励ました天使が居た。 その言葉の通り、己は空っぽではない。 胸の中に黒いものが生まれるように、己は空っぽではないのだ。 「それは、僕も祈りを。 人々のため神の千年王国への道のり……遠く険しい旅のための祈りを」 人々が救われる寸前、導きの救世主の前に偽りの救世主が現れる。 偽りの救世主は倒されることでその使命を完遂する。 そう言った意味では、結局、ロウヒーローは救世主ではなかったのだろう。 目の前の少年が救世主である可能性はどうだろうか。 聡明な少年だ、恐らく、ロウヒーローの何倍も、何十倍も。 見えているものが違うとは、そういうことなのだろう。 松下一郎の父は大手電機メーカー、太平洋電気の社長だ。 全てが恵まれている少年は、しかし、そこに留まり続けるつもりはないようだった。 篤き信仰を、強い信念を持った、救世主となり得る存在だった。 彼もまた、聖杯戦争に参加し、規格外の存在である英霊を使役するマスターなのだろうか。 『……恐らく、マスターなのだろう』 可能性は高いだろう、隠し切れない何かというものがある。 もしも、NPCだというのならば、余りにも異常すぎる。 しかし、だからといって襲いかかるつもりはない。 悪魔くんの信仰が本物であるかぎり、ロウヒーローが悪魔くんと敵対する所以はないのだから。 「牧師様」 「はい」 「牧師様は、自分を使徒となり得る人物だと想いますか?」 「……僕は贄なのでしょう」 かつて、贄であった。 ならば、ここでも贄である可能性は否定出来ない。 それでも、同じ結末を歩むつもりはない。 神に捧げられた魂だとしても、本物があった。 その本物を見失うことだけはしたくない。 道を違えた、二人の友人のために。 「人は贄、ということですか?」 「いいえ、人は贄ではないありません。 君は、贄などではありません。 ただ、己の所業と想いの過ち故に、贄になってしまう人間が居るということです。 そして、それが僕だった」 試すような言葉と、決断する言葉。 ――――向き合う二人の背中に、不可視の二柱の天使。 世界は、誰に救われるのか。 誰が、世界を救えるのか。 世界は試されている。 ◆ 試される者というと、ここにも二人いる。 整った設備のトレーニングルーム。 と言っても、通常のトレーニングルームとは、少々趣きが異なる。 ただ身体を鍛えるというよりも、ある種の指向性を持って、身体だけでない様々なものを鍛える場所だった。 「おはよ」 『渋谷凛』は、そんな室内へと入り込んだ。 ここはアイドル活動を支えるためのレッスンプログラムを行う、そんな場所だ。 ここは、アイドルがアイドルへと『成る』場所なのだ。 「あっ、おはよう、凛ちゃん!」 凛が訪れる前に先客が居た。 『島村卯月』 凛とは決して遠からぬ縁にある、仲間とも、親友とも呼べる間柄。 自分の世間的な評価の関係で、奇妙な感覚を抱きつつも、変わらない卯月が居ることに胸をなでおろした。 全てが夢の様な出来事の中で、卯月の存在だけが、凛に現実を感じさせた。 たとえ、偽りだとしても。 最初は、珍しいとは思わなかった。 ただ、それが奇妙なことに気づいた。 「……何時間?」 「へ?」 「何時間やってるの?」 「へ……へっと、何時間だろう?」 異常なまでのトレーニング量だった。 それは鍛えるというよりも、身体を動かすためだけのそれだった。 異常だった。 サボり魔なわけではない、サボり魔なわけではないが、それにしても異常なレッスン量だ。 異常ではないと思ったものが、異常だった。 その一方でまた、卯月も心のなかに消化しきれないものを感じていた。 上手く、感情で消化できない。 理論建てて理解もできない。 だから、身体を動かしてごまかしていた。 聖杯戦争、己だけが奇跡に至るために、他者を傷つける戦争。 そんな戦争に理由もなく耐えられるほど、卯月は強く、無感情な人間ではなかった。 二人に願いと呼べるものは、少なくとも、表面上には存在しないだろう。 故に、二人は試されている。 島村卯月は外なるものに試され、渋谷凛は内なるものに試されている。 渋谷凛は窓の外を眺め、島村卯月は静かに俯いた。 ◆ 渋谷凛が視線を向けた場所で、一人の男が歩いていた。 『狡噛慎也』。 煙草に手をかけ、その手を止める。 常識として、街路は禁煙だ。 苛立ったわけではないが、無意識に舌打ちを鳴らす。 特別な用事はない、フリーな時間だ。 と、同時に、為そうと思ったことへの道のりも見えない。 フリーな旅だ。 敵対者とも、聖杯の使いも姿が見えない。 当然だろう、有利な戦いとは常に奇襲だ。 己の存在は隠すに限る。 ちらりと、不自然ではないように周囲を見渡す。 怪しげな人物は居ない。 誰かを怪しいと感じれば、全員が怪しく見える。 東京という街では誰もが早足で、誰もが不満気に街を歩いている。 そのくせして、誰一人として同じ顔をしていない。 狡噛は再び舌打ちがでかけ、止める。 ただ、己の後ろにサーヴァントである焔の存在を確認する。 焔もまた、特別に怪しいといった気配を感じていないようだった。 目的を見つけるために、目的もなく、歩き続ける。 そんな狡噛の姿を、一人の男が視界に捉えた。 その男、『衛宮切嗣』はその瞬間、意味もわからずに叫び声を上げそうになった。 それは、決して切嗣自身の叫びではなかった。 切嗣の意思とは別に、己の『右肩』に潜む最上級の妖だからこそ上げようとしている、あまりにも無様なまでの叫びだった。 喉まで出かかったその叫びを、必死の想いで飲み込む。 切嗣は認識していないが、それを発作だと思うことにした。 十年前、穢された冬木の大地と己。 それ以来、続いていた。 この聖杯戦争に訪れてからも、何度もうずきがあった。 恐らく、このうずきはサーヴァントと近づいて起こるものなのだろうと踏んでいた。 自身のサーヴァント、槍兵ではなく、すでに槍へとなったものを召喚の手順を考える。 奇襲に備えるためだ。 同時に、そのうずきが敵対者に悟られているかもしれないとも考えていた。 はっきりとはわからない。 だから、人混みに紛れ込むように動くことを決めていた。 しかし、それでもここまで激しい発作は初めてだった。 これも異常な聖杯戦争へと訪れたが故だろうか。 この先、どんどんと意味もなくうずきが増していくのだろうか。 答えは、ノーだ。 右肩に潜む妖が、激しい敵意と恐怖を抱いただけだ。 切嗣には、ただ、突如として右肩が激しく脈動しているようにしか感じない。 これもまた、正確ではない。 視界に映った無数の人々の中の一人、狡噛慎也――――の、さらに奥に居る存在に反応している。 切嗣の右肩から舐めあげるような目で、目ざとく見つけたその存在。 たとえ、姿を消していても、右肩の余りにも臆病な存在は見つけ出してしまう。 もしも、狡噛慎也が優れた魔術師で、サーヴァントが『本来の英霊の姿』として召喚されていたら――― 切嗣は右肩を握りつぶすように、左手で強く掴んだ。 ◆ おかしなことになっているのに、世界は周っている。 その事実に、どこか納得のいかない想いすら抱いてしまう。 『高坂穂乃果』はその事実に、納得が出来なかった。 まるで、何もかもに否定されているようだった。 ただ、居心地は悪くなかった。 誰もが笑っていたからだ。 釣られるように、穂乃果は笑った。 『南ことり』に釣られるように、穂乃果は笑った。 ことりは、本当に楽しそうに嗤っていた。 ただ、ことりが一人の時。 ふと、暗闇を見ては怯えるように、逃げ去るように駆け出すことを穂乃果は知らない。 そんな様子を、『園田海未』は見ていた。 かつての世界だ。 三人いれば、それだけで楽しかった世界だ。 表向きは、そうしようと、努めていた。 ただ、海未の中に納得できないものがあった。 このままでいいのか。 このままで良いのならば、海未の後悔の念と、ことりの苦悩の念と、穂乃果の自傷の念とはなんだったのか。 それでも、この世界に浸かろうとする自分が情けなかった。 この世界では。 絢瀬絵里も、東條希も、矢澤にこも、西木野真姫も、小泉花陽も、星空凛も。 ――――彼女たちの、『特別』な存在ではない。 憎らしくも有り、同時に愛しくもあった。 ここは『かつての』幸せな日々。 ただ、聖杯があって、代わりに、μ sがなかった。 それだけの違いであった。 だからこそ、その違いは大きな違いだった。 μ sの代替が聖杯なのだとすると。 ――――ひょっとすると、彼女たちにとって、μ sこそがあらゆる願いを叶える、万能の願望器だったのかもしれない。 いつか、そう思う日が来る。 そんな日を、呼び寄せて、見せる。 三騎の英霊は、奇しくも同じ思考をしていた。 彼女たちを救いたい。 彼女たちが後悔していることを、深層で繋がった彼らは理解していたから。 ◆ 『マエリベリー・ハーン』ことメリーは迷っていた。 己の相棒とも言える『宇佐見蓮子』は、見つけることが出来た。 出来たが、これからどうするかを決めあぐねていた。 これがメリーと蓮子だけならば話が早く、合流をするだけだ。 幸いというべきか、メリーのサーヴァントは使い魔を使役する術に長けている。 それこそ、四六時中、蓮子を『監視』し『護衛』することも可能だった。 「なにをしてるのかしら……」 蓮子は先日まで行っていた就職活動を、バッタリと辞めている。 間違いなく、記憶を取り戻している。 そして、意味もなくキョロキョロとしているのだ。 物陰を注視したり、ゴミ箱の裏を覗いたり、意味もなくロッカーを開けては閉めたりを続けている。 まるで、何か『宝探し』をしているようだった。 メリーのサーヴァントは、それが蓮子のサーヴァントの特殊能力である可能性が高いと言った。 なるほど、どこかに何かをマーキングする能力、あるいは、何かを生みだす能力なのかもしれない。 そう、そして、『蓮子のサーヴァント』こそが問題なのだ。 聖杯に奇跡を願うのはマスターだけではない。 生前、為すことのできなかった奇跡を求めるサーヴァントのほうが多いのだ。 『聖杯を求めていないメリー』を良しとしない可能性が高い。 メリーを蓮子に知られずに殺しにかかる可能性も高い。 ひょっとすると、蓮子がサーヴァントに操られている可能性だってある。 魔術師として突出した存在である『キャスター』のサーヴァントならば、あり得る可能性だ。 そんなメリーの心を知らない蓮子は、また、宝箱を空けるようにゴミ箱の蓋を開いた。 そこに何があるというのか。 蓮子ならば、未知の宝を求めてもおかしくはない。 小さくため息をつき、メリーは空を見た。 秘封倶楽部の中を引き裂くような、境界線が見えた。 絶対に会いに行く。 そのために、今は会わない。 今は、今は―――― ◆ 二人の男女が居た。 まだ、男と女に成りきれてない男女だ。 少年と、少女。 平たくいえば、童貞と処女が居た。 「なんか、最近物騒な噂が多いね……死亡事故が多発っていうじゃないか」 「……そ、そうだね」 いつもからかけ離れない程度ににこやかな顔で、少年『峯岸一哉』は話しかける。 耳に付けた、ネコミミのようなフォルムをしたヘッドホンからは音楽は流れていない。 一種のファッションだ。 一方で、少女『谷川柚子』はぎこちない。 どこか、疑念を秘めた目で一哉を見ている。 あるいは、少年にではなく世界そのものに疑念を向けているのだろう。 嘘をつけない、普通の少女なのだろう。 ユズの豊満な胸が揺れた。 深い息を吐いただけで、揺れるのだ。 「どうしたの?」 「え、いや、その……」 「なんか、らしくないね」 その言葉に、ユズは俯いた。 一哉は少し苦笑を浮かべて、頬をかく。 似ている。 目の前の少年の動作が。 ユズの前から去る前の一哉と、似ているのだ。 だから、わかる。 きっと、目の前の一哉は本当の一哉ではない。 「……ごめん、ユズ」 「え?」 「さっきも言ったとおり、ちょっと用があるんだ。 それじゃ……さっきも言ったけど、最近物騒だから気をつけなよ」 ユズは背中を見続けた。 偽物だと、直感的に理解できた。 正しく、その背中は峯岸一哉のものではなかった。 峯岸一哉が召喚したサーヴァントの宝具が一、『三つの下僕』。 その中で、隠密と索敵を主とする不定形生物ロデムが峯岸一哉に化けた姿なのだ。 ロデムは気配遮断に等しい能力を保持している。 故に、戦闘行為に移らない限り、気配察知スキルを持たないサーヴァントからは異常と確認されないのだ。 しかし、ユズは漠然とした違和感を抱いていた。 ロデムは峯岸一哉ではない。 そんな当たり前のことから生まれる違和感。 当然、ロデムもまた、そんな『峯岸一哉に違和感を覚えるユズ』を観測している。 そして、主であるバビル2世と峯岸一哉に報告を行っている。 お互いに疑心を抱いている。 しかし、二人は幼馴染であり、男と女だ。 確信したとしても、彼/彼女が敵対者であることを観測する勇気を持てるだろうか。 東京タワーへと偽装したバベルの塔は、ただ、佇んでいた。 ◆ 『七原秋也』は違和感しか覚えていなかった。 まるでタイムスリップしたかのように、今までの日常が目の前で繰り広げられる。 だからこそ、誰も彼もが怪しかった。 死んだはずの人物が居るという異常に隠れて、小さな異常を抱えている 心を落ち着かせるように、メロディーを小さく口ずさむ。 しかし、それとは裏腹に緊張だけが高まっていく。 ひょっとすると、クラスメイトの中にも牙を研いでいるものがいるかもしれない。 劇的な何かが起こった。 だが、クラスメイトへの理解という意味では七原は殺し合いの以前と以後では何も変わっていないのだ どいつもこいつも怪しい。 銃口を握っているからこその、緊迫感があった。 例えば、『桐山和雄』。 七原は、桐山が恐ろしい。 桐山とは『殺し合いをしただけ』の関係だ。 結局のところ、桐山の根本的な部分は何も知らない。 ただ、桐山は殺し合いにおいても、恐ろしかった。 その事実を知っているからこそ、七原は今でも桐山が恐ろしい。 殺し合いという異常の中で、目の前の存在が何かわからない。 今日もまた、街中で見つけた桐山の姿を視線で追っていた。 そして、桐山が人混みのなかへと消えていく。 少しだけ躊躇し、しかし、桐山を追いかけることにした。 いわば、尾行だ。 しかし、桐山だけに集中していた七原は近くにいる少女に気付かなかった。 「……あっ、すいません」 「え、あ、す、すいません」 ドン、と小さな音を立てて、少女を弾き飛ばす形になった。 尻もちをついた少女へと七原は手を伸ばし、引き起こす。 そして、何度か頭を下げた後、視線を上げる。 桐山和雄の姿は消えていた。 ふぅ、と息を吐き、歩を進めた。 目的はなくなっていた。 ―――そんな七原を後にした、先ほど七原とぶつかったばかりの『羽藤桂』はふと、不思議なことに気づいた。 先ほど、桂とすれ違ったはずの、オールバックの少年。 その少年が、桂の前方に居た。 人混みの中を奇妙にくるりと一回転してきたことになる。 そして、再び桂とすれ違う。 桂が振り返ると、オールバックの少年が居て、その奥に長髪の少年が居た。 『七原秋也』『桐山和雄』『羽藤桂』 先ほどと全ての位置が逆転していることに気づいているのは、桐山和雄だけだった。 ◆ 『神狩屋』、正式な名称は『鹿狩雅孝』と呼ばれる男は古物商のカウンターに座りながら、本を読んでいた。 霊体へと至ることのできない自らのサーヴァントもまた、古物屋の奥の奥、姿を秘して本を読んでいた。 二人は行動の重要性を知っているが、同時に待ちの重要性も熟知していた。 ただ、激しく動くときのために、静かにその身を止めていた。 ここには様々なものがある、それこそ、自らの城のごとく。 己のサーヴァントも気に入るとまでは言わないが、退屈を紛らわせる程度のものが。 待つことも、試すことも。 経験だけなら豊富だ。 古物商の扉が開いた。 神狩屋は己の中の感情とは裏腹に「いらっしゃい」と優しく言った。 神狩屋は眼鏡の奥の瞳を来客へと向けた。 白い男だった。 特徴の強い男だが、まず先に浮かぶものは白さだった。 神狩屋は、特別奇妙な感情は浮かべなかった。 白い来客、『槙島聖護』は店内を見渡す。 満足したように、小さく息を吐いた。 「いい店だ」 その言葉に、神狩屋は小さく微笑んだ。 槇島は、店内を見まわる。 神狩屋は静かに待った。 槇島はいくつかの品を見聞すると、海外輸入と思しき、グリム童話集に手を取った。 「『お父さんはミートパイにされてしまった』……店主はどう思う? グロテスクと呼ぶには、いささか、婉曲的で、それでいて悪趣味ではないかい?」 「その一文を物語として載せた解釈は幾らでも出来ます。 ましてや、そのグリム童話集は決して原本ではありませんから」 「希釈され続けた物語だ、本来の物語と異なることもある……そういうことかい?」 「それでも、その物語にも原典があります。 その一文には貴方を惹きつける、原典から生まれる人々のトラウマがあるのでしょうね」 会話を交わしながら、会計を済ませる。 お互いに、店主と客以外の素振りはなかった。 「また来るよ」 お互いに、その言葉が店主と客以外の意味を持つ可能性を理解していた。 それでも、お互いに激しい動きは見せなかった。 ◆ ダッジャール、偽りの救世主。 英霊としてのランクの低さを示すような、そんなクラス名にリエンス王は自嘲する。 まるで俺ではないか。 偽り、偽り、偽り。 聖杯ですら、自分は王のUTSUWAではないというのか。 UTSUWAでなければ、王にはなれないというのか。 それほどまでに、UTSUWAとは重要なものだというのか。 酒を呷った。 その近くで、自らの敵対する存在が居るかもしれないことは理解していた。 不覚を招くかもしれない、ここは戦場なのだ。 それでも、リエンスは酒を呷った。 聖杯という聖なるUTSUWAにすら選ばれないのではないか。 そんな疑惑が離れなかったからだ。 彼が幸運だったのは、傍にいるものもまたリエンスの存在に気づいていないことだ。 男は不自然に片目を瞑った男だった。 何かの呪いやではなく、本当に隻眼なのだろう。 隻眼の男、『ふうまの御館』は、強い酒を口内で転がすようにゆっくりと呑んでいる。 夜が本当に更けるのを待っているようだった。 時刻は十一時。 まだ外は、明るさとこの地の所有者である人々の存在が濃い時間帯だ。 己の従者である英霊が好み、最も強くなる時間からは少々離れる。 リエンスとふうまが同時に酒を呑んだ瞬間だった。 震えが走った。 二人はそれを理解した。 しかし、特別な動きは見せかなかった。 ふうまは財布を取り出した後、素知らぬ振りで立ち上がり、店を出るだけだった。 特別な素振りを見せなかった。 それが罠であるのかどうかもわからないが、それに乗じて罠を仕掛ける輩が居ることを承知していた。 リエンスは動かなかった。 ただ、酒を飲み続けた。 そんな中で、一人の銀髪の男も酒を飲んでいた。 薄く嗤った。 リエンスとふうま以外にも、世界が震えた意味を知っている男だった。 ◆ 『始まるぞ、魔人アーチャー。 聖杯戦争の、本当の開始だ。 唯一神を殺すための、始まりの始まりを知らせる鐘だ』 ◆ "Oh, and you know the thing about chaos? " "It s fair." ◆ 「この世で本当に公正なものは混沌だ」 ルーラーのサーヴァント、シビュラシステムにより召喚された酒々井水絵は拘束されていた。 本来、英霊には程遠い存在だが、シビュラシステムを介在することで使い魔のように聖杯戦争の舞台を動く。 今回もまた、聖杯戦争参加者の違反の取り締まり、及び、NPCにバグが生じていないかの確認の見回りだった。 その中で、突然、脚が失われた。 動揺のなかで、しかし、自身の武器である『執り行うは聖人の白<ドミネーター>』を翳した。 だが、ついで、腕が失われた。 ドミネーターが地面に落ちた。 そして、闇の中で、ピエロが現れた。 『ジョーカー』 そのピエロの名を、酒々井は把握していた。 聖杯戦争参加者の一人で、率先してNPCへの殺害を行っているものだ。 ルーラーであるシビュラシステムから渡された情報に、確かに載っている。 「公平なのは数値じゃあない、数値こそ不公平だ」 「何も知らないから言える言葉ね」 「俺は何も知らない、ただ、アンタや他のやつより先が見えてるだけさ」 ジョーカーは言葉を途切らせない。 言葉こそがジョーカーが持つ唯一の特異な武器と言えた。 なぜここまでの異端児が居るのだろうか。 それは、対となる異端児が要るからだ。 ムーンセルがバットマンを観測し記録する限り、ジョーカーは存在する。 影を産まない光は、光でないのだから。 ジョーカーという存在は、バットマンが光である証左なのだ。 だから、ジョーカーは影で在り続けることが出来た。 ムーンセルの存在で、あらゆるバットマンの存在を確信できた。 だから、ジョーカーはどこかの人間ではなく確固たるジョーカーとして存在できるのだ。 「アンタより俺のほうがずっと公平なのさ」 そして、確固たるジョーカーとは、その精神性だけならば英霊にすらなり得るほどの規格外存在だ。 ジョーカーの主義というわけではないが、ジョーカーは公平に犯罪を行うことにした。 特別な理由がなく、犯罪を行う。 特別なものがないことを公平だとした場合、その行動に意味は問えない。 すなわち、混沌こそが公平なのだ。 『あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ』 空気を震わせる、不気味な音。 それは決して声などではない、言葉などではない。 あまりの強さに、己という存在を壊してしまった存在。 バーサーカーのサーヴァント、ギーグ。 突発的に暴れだす以外には、もはやジョーカーですらコントロールは出来ない。 だが、ジョーカーはそれで良かった。 混沌こそが公平なのだ。 自分だけが優位に立つわけではないというだけだ。 今回、東京を見まわる酒々井を捉えたのも、単なる偶然であった。 半ば癇癪じみたギーグの動きが、酒々井への攻撃となっただけ。 英霊であるギーグの超能力による攻撃は酒々井の右足を消し去り、同時に、麻痺状態に陥らせた。 癇癪の度に頭痛と気怠さが走るジョーカーだが、酒々井の傷を見た瞬間、それを消すように笑ってみせた。 そして、自らの寝所へと、酒々井を連れてきた。 そこからジョーカーは、犯罪を犯し始めただけだ。 「グサアアアアアアアアア!」 ジョーカーはわざとらしく、擬音を口にして刃物を太ももへと突き刺した。 しかし、酒々井は反応しない。 強がっているわけではない。 反応できないのだ。 その痛みを、感じることが出来ないから。 霊体とも言える酒々井をジョーカーが傷つける。 そんなことが出来るのは、凶器が『特別』だからだ。 凶器とはすなわち、ギーグによって破壊された右足の骨を突きつけられているのだ。 ブヨブヨとした白身と赤身が覗きこむ右足。 そんなものを、ジョーカーはユニークアイテムや宴会小道具のように、何の変哲もなく使う。 「俺ってどう思われてるんだ?」 「……ッ」 「わからないか、アンタじゃ」 ルーラーのサーヴァント、シビュラシステムから与えられていた宝具を蹴っ飛ばしながら、ジョーカーは嗤った。 丁寧に、皮を剥いでいく。 感覚がない。 ギーグの攻撃によって、全身が麻痺している。 それは超自然的な麻痺。 視覚は失っていないし、喉を震わせて声を発することはできる。 しかし、身体を動かすことが出来ず、また、痛みも感じない。 爪が剥がれる。 乳頭が切りつけられ、白い乳房に血が染まる。 グリッ、と柔らかい感触の後に硬いものを感じる。 右の視界が消える。 頬を、血と涙ではない体液が濡らした。 ジョーカーは酒々井を痛めつけているわけではない。 ジョーカーは人を傷つけることで快楽を得る体質ではないのだから。 ただ、犯罪を犯しているのだ。 ルーラーの使いである酒々井を、意味もなく公平に痛めつける。 聖杯戦争を管理し、ジョーカーを抑えつけようとするルーラーへと向かって犯罪を犯しているだけなのだ。 ◆ 『シビュラシステムより東京及びムーンセルへ』 ジョーカー及びバーサーカーのサーヴァント、ギーグによるルーラーへの反逆行為を確認。 対象への『秩序齎す執行<デコンポーザー>』の使用を要求。 『東京よりシビュラシステムへ』 否認、当件は東京及び聖杯戦争に害をなす行為ではない。 『ムーンセルよりシビュラシステムへ』 条件付き承認、NPCの平均犯罪係数が常時の140%を超えた瞬間に使用。 『シビュラシステムより東京及びムーンセルへ』 条件付き承認1、否認1。 代替案、討伐クエストの告知。 ジョーカー及びギーグの一定の情報を公開。 さらに、討伐成功者に、令呪の一角と要求される情報を開示。 『東京よりシビュラシステムへ』 承認、東京の澱みがより加速する。 『ムーンセルよりシビュラシステムへ』 条件付き承認、開示する情報は東京及びムーンセル及び聖杯そのものに関連しないもの限定とする。 他マスター、サーヴァントに関する情報の公開量はシビュラシステムへと一任する。 『シビュラシステムより東京及びムーンセルへ』 承認1、条件付き承認1。 条件付き承認にもとづき、只今より討伐クエストを告知する。 『東京よりシビュラシステムへ』 承認。 『ムーンセルよりシビュラシステムへ』 承認。 ◆ 『高坂穂乃果』 ――セイバー―― 『アマテラス』 『鹿狩雅孝』 ――セイバー―― 『カーズ』 『南ことり』 ――アーチャー―― 『ヴィンセント・ヴァレンタイン』 『カイン』 ――『魔人』アーチャー―― 『織田信長』 『羽藤桂』 ――アーチャー―― 『白露型駆逐艦四番艦『夕立』』 『園田海未』 ――ランサー―― 『愛乃めぐみ/キュアラブリー』 『衛宮切嗣』 ――ランサー―― 『獣の槍』 『渋谷凛』 ――ランサー―― 『アドルフ・ヒトラー/ 検閲済み 』 『松下一郎』 ――ライダー―― 『ザイン/ 検閲済み 』 『峯岸一哉』 ――ライダー―― 『バビル2世』 『島村卯月』 ――ライダー―― 『マーズ』 『宇佐見蓮子』 ――ライダー―― 『伝説のモグラ乗り』 『マエリベリー・ハーン』 ――ライダー―― 『十四代目葛葉ライドウ』 『槙島聖護』 ――キャスター―― 『フェイト・アーウェルンクス』 『ふうまの御館』 ――キャスター―― 『加藤保憲』 『七原秋也』 ――キャスター―― 『操真晴人/仮面ライダーウィザード』 『狡噛慎也』 ――アサシン―― 『焔』 『谷川柚子』 ――アサシン―― 『復讐ノ牙・明智光秀』 『ジョーカー』 ――バーサーカー―― 『ギーグ』 『桐山和雄』 ――ザ・ヒーロー―― 『ザ・ヒーロー/◆◆◆』 『リエンス』 ――ダッジャール―― 『カオスヒーロー/▲▲▲』 『ロウヒーロー/■■■』 ――エンジェル―― 『無道刹那』 汝、導かれし騎士を従え、運命に挑む意思あらば。 ――――自らの『最強』を示せ。 -001 Ruler and Dominator 投下順 001 追うべき獲物は -001 Ruler and Dominator 時系列順 001 追うべき獲物は BACK 登場キャラ NEXT -022 高坂穂乃果&セイバー 高坂穂乃果&セイバー(アマテラス) 006:俺たちは闇から光を見ている -021 神の摂理に挑む者達 鹿狩雅孝(神狩屋)&セイバー(カーズ) 006:俺たちは闇から光を見ている -020 南ことり&アーチャー 南ことり&アーチャー(ヴィンセント・ヴァレンタイン) 017:僕らは■■のなかで OP カイン&魔人アーチャー 直哉(カイン)&『魔人』アーチャー(織田信長) 009:誓いの爪痕 -019 羽藤桂&アーチャー 羽藤桂&アーチャー(夕立) 016:Who is it that she was summoned? -018 園田海未&ランサー 園田海未&ランサー(キュアラブリー) 005:理想と現実! 悲劇の聖杯戦争!! -017 アインツベルンが悪い 衛宮切嗣&ランサー(獣の槍) 006:俺たちは闇から光を見ている -016 渋谷凛&ランサー 渋谷凛&ランサー(アドルフ・ヒトラー) 006:Who is in the center it is chaos? -015 悪魔くん聖杯戦争(法) 松下一郎(悪魔くん)&ライダー(ザイン) 009:誓いの爪痕 -014 峯岸一哉&ライダー 峯岸一哉&ライダー(バビル2世) 012:私の鳥籠の中の私 -013 島村卯月&ライダー 島村卯月&ライダー(マーズ) 015:禍々しくも聖なるかな -012 宇佐見蓮子&ライダー 宇佐見蓮子&ライダー(伝説のモグラ乗り) 002:聖遺物A -011 マエリベリー・ハーン&ライダー マエリベリー・ハーン&ライダー(十四代目葛葉ライドウ) 013:Dear your friend -010 槙島聖護&キャスター 槙島聖護&キャスター(フェイト・アーウェルンクス) 011:誰も知らないあなたの仮面 -009 ふうまの御館&キャスター ふうまの御館&キャスター(加藤保憲) 009:誓いの爪痕 -008 七原秋也&キャスター 七原秋也&キャスター(操真晴人) 003:夏の十字架 -007 狡噛慎也&アサシン 狡噛慎也&アサシン(焔) 001:追うべき獲物は -006 ユズ・アサシン 谷川柚子(ユズ)&アサシン(復讐ノ牙・明智光秀) 012:私の鳥籠の中の私 -005 ジョーカー&バーサーカー ジョーカー&バーサーカー(ギーグ) 015:禍々しくも聖なるかな -004 桐山和雄&ザ・ヒーロー 桐山和雄&ザ・ヒーロー(ザ・ヒーロー) 006:一人×2 -003 聖杯のUTSUWA リエンス王&ダッジャール(カオスヒーロー) 004:王の試練 -002 救世主の救い方 ロウ・ヒーロー&エンジェル(無道刹那) 014:disillusion -001 Ruler and Dominator ルーラー(シビュラシステム) 006:Who is in the center it is chaos?
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未だ日の昇らぬ深夜。 冬木市、円蔵山中腹に建つ寺院。柳洞寺。 かつては大聖杯があった決戦の地でもあり、キャスターやアサシンと戦い、セイバーを失った場所。 その一角で、衛宮士郎は地面を見つめて拳を握り締めていた。 脳裏に浮かぶのは、一人の白い少女の姿。 「……イリヤ………」 かつて救いたかった少女、でも救えない、救うことを許されなかった少女。 もし、もしもだ。二度目というものがあるのであれば、救いたかった。 ――わたしよりシロウに、これからを生きてほしかったから。 気付いたのはいつだっただろうか。彼女と切嗣の関係に気付いたのは。 ――わたしはお姉ちゃんだもん。なら、弟を守らなくっちゃ。 かつて自分は、桜のためにセイバーすらも犠牲にして戦った。 そんな自分でも、イリヤには生きていて欲しかった。そう思ったのだ。 そしてこの場において。 『片方は―――と銀髪の―――組み合わせで、もう片方は何かメカ―――と銀髪に赤い目の小さい女の子の組み合わせだったっス!』 『ぁ…し、ろ……』 「…っ!!」 グシャ 地面を殴る。全力で。 手の骨にヒビが入り、皮膚が破れて血が地面に滲んだ。 構わない。イリヤはもっと痛かったんだ。 地面を、殴る。殴る。殴る。 皮膚が形を失う。骨が砕ける。痛みが腕を貫く。 それでもいい。今だけはこうしていたい。痛みで全てを忘れていたい。 イリヤ、イリヤイリヤイリヤイリヤ―――――― 「シロウ!」 地面を殴る腕を横から誰かが掴んだ。 目に入ったのは金髪碧眼の少女。 自身のサーヴァント、セイバー。 言いたいことは分かっている。だから、それを言われる前に自身に溜まった思いを吐き出した。 「イリヤは…、じいさんの、衛宮切嗣の、たった一人の子供――つまり、俺の、姉だったんだ」 「………」 「あの大聖杯の前で、イリヤは死ぬはずだった俺の代わりに聖杯の門を閉じたんだ。 『弟を守るのが、お姉ちゃんの役目だ』なんて柄でもないこと言ってさ、あれを止めに行って、戻ってこなかった。 最後に、壊れかけた俺に新しい体くれてさ」 「………」 そう、この体はイリヤによってもたらされた、衛宮士郎としての魔法の器なのだ。 今こうして自分が生きているのもイリヤのおかげ。 だが、それでも彼女のことも救いたかった。なのに、あの時何もしてやれなかった。 そして今回。 「イリヤがいるって聞いたときは、今度こそはって思って頭が真っ白になったさ。 でも、その結果が……!」 「…シロウ」 話を聞いたセイバー、それでも士郎の手を離そうとはしない。 「シロウの気持ちは…、いえ、私には察することしかできないでしょう。 ですが、だからと言ってその体を痛めても何も解決しないことは分かります。 イリヤスフィールも、そんなあなたの姿を望みはしないはずです」 「………、そう、だよな」 そう、この体は彼女が託した最後の願いなのだ。こんなことで傷つけてはいけない。 それに、俺にはまだやらなければならないこともある。 「包帯と薬を探してきます。シロウは皆のところへ先に戻っていてください」 「…あ、セイバー、少し…待ってくれ」 そう言って、セイバーを引き寄せ、抱きしめた。 「シロウ…?」 「…しばらく、こうさせてくれ」 何かを察したのか、セイバーはそのまましばらく、何も言わずただ俺のことを抱きとめた。 かつて失い、またこの場でも失ってしまったもの。 心は締め付けられるように痛い。 なのに、涙は流れなかった。それがかえって辛かった。 ◆ 柳洞寺の本堂の一室。 そこには3人の存在があった。 ルルーシュ・ランペルージ、セイバー。 金田一一。彼のサーヴァント、ライダーは今はこの部屋にはいない。 内セイバー以外はそこまでの傷を負っている様子もない。しかしセイバーもそこまでの傷を負ってはいない。 ライダーの宝具の効果あってのものだろう。 一時的にこの場に休息をとっていたのだが、衛宮士郎は目が覚めたと同時、飛び出すように出て行ったしまった。 こんなところで単独行動をされても迷惑だったのだが、セイバー(アルトリア)が追っていったこと、そして彼女もここから離れはしないだろうと言った言葉を信じて待つことにしたのだった。 「さっきといい無用心なやつだ。もしさっきのランサーとの戦いに寄ってくる者がいたらどうするつもりだ」 「まあまあ。さっきの衛宮さんのさっきの顔見たでしょう? それに衛宮さん、ライダーが銀髪の少女について話したときも凄い顔で出て行ったし。 もしかしたら彼女、あの人の知り合いだったんじゃないかな?それもかなり親しい…」 「だからと言ってな…。まあ、済んだことは仕方ないか」 ともかく、そんなことを言って時間を潰しているのも問題だ。 実際ライダーの使い魔の報告では士郎は柳洞寺を離れてはいない様子。 ともあれ、先の戦いで分かったことについて考えなければならない。 「あのランサー、クーフーリンのマスターの操ったあれは何だ?」 そう、あの銀髪眼鏡のマスターが操った謎の人型の存在。 聖杯戦争について明るくない自分達からすれば、むしろあっちの方がサーヴァントと言われても違和感は薄かった。 あれも所謂魔術というものなのだろうか。 「ガウェイン、その辺りはどうなんだ?」 「あれはその認識でも極端な違いはないでしょうが、どちらかと言えば魔術に近い存在のようですね。 しかし我らの世界の魔術とはまた違う系統のもののようですが」 ルルーシュの背後の従者は主の問いかけに答える。 魔術師というものは魔力を用いて神秘について研究する者のことを指す。 この辺りは一もライダーから聞いていたことだ。細かいことは割愛する。 「ではあれも過去の魔術師とやらがその血統を継いでいった結果作られた力だと?」 「おそらく違うでしょう。我々の世界には超能力という存在もあります。 人が魔術にも魔の存在にも頼らず存在する特異能力。 無論あれがそうであるという確証もありませんが。ただ、王にも心当たりはあるのではないですか?」 「俺にか?」 「ええ、あの時ランサーの言った言葉を思い出してください」 ランサーが言った言葉。それを問われてルルーシュも考える。 あの青タイツの男が自分に言った言葉だ。何といわれたか。 『そりゃ魔眼の類か?その歳で大した威力だが…俺らサーヴァントには対魔力があるんでな、効きはしねえよ』 「魔眼…」 「お気づきになられたようですね」 そう、確かにあの男はギアスのことを魔眼と言った。 ルルーシュは魔術師などではないが、超能力者かと言われたらおそらく考えるかもしれない。 ギアス。絶対遵守の王の力。 C.C.によって与えられた能力。確かに魔眼ともいえるだろう。 「一、お前、何か不思議な力のようなものに心当たりはあるか?」 「いや、俺も本当に普通の人間だし、そんな魔術とか超能力みたいなものの本物を目にした、もしくは聞いたことなんてないぞ」 金田一への問いかけの後改めて考える。自分にとって当たり前すぎるものであったため少し感覚がおかしくなっていたかもしれない。 だが、ギアスも紛れもない異端の力なのだ。 「つまり、ここにはあの男に限らず、様々な能力を持った存在がいると考えられるわけだな」 「ええ、我々サーヴァントを殺しうるほどの物がそうそうあるとは考え辛いですが、マスター同士の戦いとなった際の大きなアドバンテージとはなるでしょう」 「なあ、さっきから聞いてると、ルルーシュも何かそういう力を持ってるように聞こえるんだけど」 と、金田一が問いかけた。 それに対し、ルルーシュは一瞬迂闊だったかと考えたが、逆に話しておいたほうがいいかもしれないと考えを改めた。 少なくともルルーシュ自身、聖杯戦争に積極的に乗るつもりも無いし、彼らとの協力関係を破綻させるつもりも今のところはない。 もし彼らにギアスを使おうものなら、逆にそのサーヴァントに殺される可能性もある。 あるいはその前に終わらせればいいかもしれないが、少なくともこの場で話しておくことに不利益はないだろう。 「ああ、俺も『力』を持っている。 絶対遵守の力、ギアスだ」 「ほう」 と、それを言ったとき、それまで霊体化していたライダーが姿を現した。 「ライダー?休んでるんじゃなかったのか?」 「一応そのつもりではあったが、少し興味深いものが聞こえてきたのでな」 「話を続けてもいいか?」 「構わんぞ、続けろ」 ギアス。端的に言えば一種の催眠術のようなもの。 だが、実際のこれは催眠術などとは比べ物にならないほどの強力なものだ。 相手をどのような命令にも従わせる。本人が望もうと望むまいと。 「そうだな、例えばこの場で一に『死ね』などと命じたら死ぬだろうな」 「な…、そんなこと…!」 「有り得ない、と思うか?だがこの場ではこんなものなど気にも留めない存在はうようよいる。 そして俺にも、相手によってはそれを命じる覚悟もある」 「なるほどな。して、ではそれが我らのようなサーヴァントには通用するのか?」 「さあな。だが少なくとも、対魔力を持ったランサー相手には通用しなかった。それより上位のランクの対魔力を持つライダーにもおそらく効かないだろうな」 言われて一は、何故休息中のライダーが姿を見せたのかに気付く。 ライダーは警戒したのだ。この男、ルルーシュを。 おそらく最初から知っていたら傍を離れはしなかっただろう。なにしろ死ね、の一言で殺すことができるのだから。 「なるほど、マスター限定の強制の魔眼と、そんな認識で構わぬのだな」 「ああ。ただ、もしかしたら効かない存在がいるということも有り得るし、これは色々と制限もある。 下手に使うわけにもいかないものでもあるが」 「そうか。だが、そんなものを持った男とマスターを共に行動させるのは、いささか気の進まんな」 ある種最もな話だ。 ルルーシュのことは、ライダーからはどうも油断ならない男という評価の様子。所謂策士のような人物と踏んでいるのだ。 そのような男が相手に命令を強制する能力を持っていると言われたのでは、やはり考えてしまうのも致し方ないかもしれない。 「なるほど、最もな話だ。ではこういうのはどうだ? この力は一度使った相手には効果が無い。つまり、今この場で使ってしまえば後の憂いもないだろう? それに実際に見ておくことでこれがどんな仕組みなのか、お前達なら分かるかもしれないしな」 「お前さんの言うことも最もだな。だが、それもこちらにとっては危険な賭けであることには違いないのだぞ?」 「ガウェイン、席を外せ」 「はっ」 と、ルルーシュは背後の白き騎士に退席の命令を下す。そしてガウェインは意義を申し立てることもなくその場から姿を消す。 周囲には霊体化している気配すら感じられない。本当にこの場から出て行ったのだろう。 「これで今俺にはサーヴァントがいない。つまりお前が攻撃してきたとしても防ぐ術はないわけだ。 この状態であれば信用するか?」 「それを可能にするのが令呪だろうが、まあ使う前に斬り捨てることはできるな。 後はマスター自身が決めることだが」 そう、例えどれほどルルーシュとライダーの間に話が進もうと、一自身がイエスと言わなければできないことだ。 無理やりしたのでは今後の信用に関わり同盟の存続が危うくなる。ルルーシュも一が拒否するのであれば無理強いするつもりはなかった。そこまで緊急も要件ではない。 それに、これは一からすればリスクが大きい。今後の憂いを無くしておくというのもこちらの問題であり、彼に関係のあることではないのだ。 「いや、やってくれ」 だというのに、彼はそう言った。 「いいのか?」 「この先もっと驚くような奴もいるんだろ?ならこれぐらいのことで怖気づいていたら生き残れないさ。 確かに彼は油断できないかもしれないけど、今はライダーがいる。ルルーシュの覚悟とライダーのことを信じたいんだ」 「ふ、はははははは!それでこそわしのマスターだ」 「なら、いいんだな?」 「ああ、気兼ねなくやってくれ!」 そう言ってルルーシュの目を難しい顔をして睨む一。 (さて、何を命じたものか) 死ね、などという命令は論外。だが簡単な命令では効果を計りにくい。 なるべく無害で実行可能だが本人には楽ではないようなこと――― (よし、これで行くか) 「悪い、少し風に当たってきただけだ。もう大丈夫だから――」 と、衛宮士郎が入ってくると同時、ルルーシュは命じた。 「金田一一、お前の―――――」 ◆ 「ここにおられましたか。叔父上」 柳洞寺の一室で包帯や消毒薬を探すセイバーの元に、ふと白銀の鎧に身を包んだ男が姿を見せた。 「ガウェイン、なぜここに?」 「主に退席を命じられまして。どうやらライダー達を信じることを選んだようで」 「それで、あなたはマスターの元を離れたというのか?」 「ええ」 「万が一それでマスターに危険が及ぶことがあってもか?」 「主の命とあれば」 アルトリアの問いかけに迷いもせず凛と答えるガウェイン。 不意にアルトリアの声色が変わる。 「変わらないな、あなたは」 「むしろ私は、生前から変わりたいと思った身ですので」 それまではサーヴァントであるという身。マスターの前で私的な会話をするというのは避けていた。 だが、今はこの場にはアルトリアとガウェインの二人しかいない。 生前の関係を考えればある程度の積もる話もある。 「時にガウェイン、先の戦闘でランサーのマスターの持っていた剣、気付いたか?」 「忘れるわけがありません。私を負かした者の剣です」 あのマスターの持っていた剣。それはかつて円卓で共に戦った騎士、ランスロットのものだったのだから。 それが何を意味するのか。この場にランスロットもサーヴァントとして呼ばれているということだ。 まだ生きているのかどうかは分からない。そう敗れる男だとも思いたくなかったが。 「やはり、叔父上は気が進みませんか?かつての友と戦うということは」 「そう…、だな」 ガウェインの心にあるのは一つの後悔。かつて私怨で戦い、それがきっかけで国の崩壊を招いてしまったこと。 だが、もし彼と戦う機会があるというのならば、今度こそ己の感情ではなく誇りを掛けて彼と戦うだろう。 そういった考えもあった。無論マスターの命が絶対なのだが。 しかし、アルトリアの表情は優れなかった。 「ガウェイン、私はこれで聖杯戦争を経験するのが3度目なのだ」 「なんと、それほどまでに戦ってこられたというのですか」 「ああ、そして、一度目の第四次聖杯戦争の折、私はランスロットに会った。同じサーヴァントとして」 「そうでしたか。叔父上がセイバーとして召喚されたとすれば、彼のクラスはライダーか、あるいは残りの三騎士のどれか、といったところでしょうか」 ガウェインは気付かなかった。この時のアルトリアが苦悩の表情を抑えていたことに。 気付いていれば問わなかっただろう。だが結果だけ言えば、気付けなかったからこそ、その先にあるものを知ることができた。 「いや、――――バーサーカーのクラスだった」 「えっ?」 ガウェインには予期もしていなかった答え。さすがに驚きの表情が顔に出る。 「友は私の存在を認識する度に怨嗟の声をあげて襲い掛かってきた。他の何者をも無視して。 そして最後は――この私の手の中で消えていった。 最後の瞬間にも、私は彼に満足な言葉も掛けてやれなかった」 その告白はアルトリアの後悔に満ちたものだった。これまでこんな王を見たことがなかっただけに、ガウェインの動揺も大きかった。 「そして、第五次聖杯戦争。この戦いの始まる前だ。 私は黒き聖杯の泥に飲まれ、己がマスターに対し刃を向けた。 叶えるべき願いも、己の誇りすらも全て捨て、この世を滅ぼそうとするモノを守護したのだ」 「……叔父上の願いとは?」 おそらくガウェインが正常な状態であれば、そのようなことを聞くことはなかっただろう。 逆に言えば、そんな質問をしてしまうほどには動揺していたのかもしれない。 「私は、―――ブリテンの救済を、そのための王の選定のやり直しを望んだのだ」 「……」 言葉を発することもなくガウェインはアルトリアの、かつての王の話を聞き続ける。 「私の治世が間違っていたのではないか、私以外の王であれば、ブリテンを救うことができたのではないか。 そう思わずにはいられなかった」 「アーサー王よ、それは――」 「なあガウェイン、お前に聞きたい。 私は王として、本当に正しかったのか?」 かつての友には恨まれ、故国の救世を願ったにも関わらず己の誇りも捨てて世界を滅ぼそうとした王。 その事実に未だ心を痛めているアルトリア。 ガウェインは、そんな彼女に対しての返答する術を持っていなかった。 王に対しては、今も昔も忠実に、実直にあるべしと心に決めたガウェインには。 ここではい、そうですということは簡単なのだろう。だが、それだけで何の解決にもならなかったのが王の生前だということに気付いてしまった。 故に、彼女の質問に対し、沈黙するしかできなかった。 ◆ (あれ?俺は一体…) 確かルルーシュのギアスの実験を引き受けて、何か命じられたような気がする。 だが、その後の記憶がない。 「俺は、生きているんだよな…?」 「ああ、生きているぞ」 ルルーシュも目の前にいる。ライダーが手を出すほどの命令を下したわけではないようだ。 彼を信じたことに間違いがないことは分かった。 見回すと、衛宮、ライダーは少し苦笑いのようなものを浮かべているような気がする。 そして目の前のルルーシュはどうしてうっすらと笑みのようなものを浮かべているのだろうか。 「あ、その、大丈夫、俺はすぐ忘れるからさ!」 「ははははははははは!」 気まずそうにする士郎、笑い始めるライダー。 「あ、あの、ルルーシュさん?一体俺は何をされたんですか?」 「聞きたいか?”お前の最も恥ずかしい記憶を言え”だ」 「?!」 「ははははは!!やられたなマスター!」 一は自分の顔が熱を持ち始めるのを感じた。 「なるほどな。お前は「ぎゃああああああああああああ!!!」 大声を上げながら考えた。やっぱりこいつは油断できないと。 ◆ 「まあ、ともあれだ。その能力が人間であるマスターには効果があることは確認できたな」 その後、部屋にはセイバー(青)とセイバー(白)も加わり、全員での情報交換となった。 ちなみにギアスをかけた後で別の命令として歌を歌えと適当に命じたが、一が歌うことはなかったため晴れて能力の証明は完了した。 「これを使えば、死ね、とは言わずとも例えば令呪を破棄しろ、聖杯戦争を棄権しろといった命令も可能だろうな」 さすがにこの二人の前で死ねと命じるかもしれないなどとは言えなかった。だが、 「待てよ。ランサーが言ってた。この場じゃ敗者はムーンセルに消されるって。戦いの放棄も敗者にカウントされるんじゃないのか?」 そう言ったのは士郎だ。 戦いの放棄、つまり不戦敗。これも敗者としてカウントされ消滅するのではないか、と。 「なるほど、敗者は消滅か。ここが電脳空間とはいえ、それが本当に帰還に繋がるのかどうかは分からないのだな。 だが、実際に死んでみなければ分からないことなど証明のしようがないだろう」 ルルーシュとしては聖杯戦争に乗った相手に情けを掛けようとは思っていない。 戦いというものはそういうものだ。人を撃つことができるものは己が撃たれる覚悟を持っていなければならない。そのような相手に手加減して戦おうとは思えない。 無論士郎と一の前でそんなことを言うつもりもないが。 士郎からは聖杯戦争について大まかなことは聞くことができた。 始まりの御三家、聖杯戦争の本当の意味、そしてアンリマユ。 その中で士郎は、もしこの聖杯戦争が冬木のものを模しているというなら、御三家、遠坂、間桐からだれかいると考えられると言った。 事実、聖杯戦争の勝者である士郎、かつての参加者であり御三家のマスター、イリヤスフィールがいたのだ。可能性としては大きい。 いるとするならば、遠坂凛、間桐桜、間桐臓硯が考えられる。臓硯は既に死んだ身であるが、イリヤがいた以上可能性として有り得るとは言っておいた。 もし凛、桜がいるのであれば力になってくれるはずだ。特に遠坂の当主である凛がこのような聖杯戦争を認めるとは思えない。 だが、臓硯がいた場合は最悪だ。かつて散々辛酸を舐めさせられただけにどれほどかき回されるか想像したくはない。 それぞれの大まかな特徴を話しておいた後、今後どうするかという話になった。 「まずは街に出る必要があるな。 一のように連れてこられた参加者が他にもいるなら乗っていない者も多いだろう。彼ら自体は非力だったとしてもサーヴァントまでそうとは限らない それを考えた場合、ガウェインが最も力を発揮できる9時に出ようと思うのだが。ガウェイン、大丈夫だな?」 「仰せのままに」 「ああ、それがいいだろうな。俺の経験なら昼の人が多い場所で戦いを仕掛けてくるマスターはいなかった」 「いや、間違っているぞ。ここが聖杯戦争のために用意された空間ということを忘れたか? それに、魔術師でない者が聖杯戦争の秘匿に気を回すとは思えない」 「確かに。かつてのサーヴァントの中には、魔術とは関わりのない者がマスターになったばかりにその力で好き勝手に振舞った組も存在しました。 今回のような場所ならばなおさらそのような者がいる可能性は高い」 そういったのは士郎の傍に控えたセイバー。 おそらくセイバーの言うそれは切嗣がマスターだった第四次聖杯戦争の時の話なのだろうが、その頃のことを進んで話したセイバーに士郎は少し驚いた。 「なるほどな。前例もある以上油断はできない。時間が来たら俺がガウェインを連れて出向こう。 あとはお前達のことになるが――」 「俺も行こう。もしここが冬木市と同じ町並みだったら、土地勘がある俺がいたほうがいいだろ?」 「お前はダメだ。感情に任せて勝手に動きかねない。厄介事まで持ち帰られたらたまらないからな」 「…なんでさ」 ライダーはこの柳洞寺の大空洞をもう少し調べたいらしく、もうしばらくこの場に留まっておきたいと言った。 また、もし殺し合いに積極的なキャスターが来るかもしれないと言った際、セイバーも残っておきたいと申し出た。 対魔力の高いセイバーが残っておくならキャスター相手なら安心だろう。 そうなると街にはルルーシュ一人で下りることになる。 だが、ルルーシュにはむしろありがたかった。 この場には参加者以外のNPCなる存在がいる。もし、彼らにギアスが効くならば―― 一般人を巻き込むということならルルーシュも抵抗があるが、電脳空間が生み出した擬似人格ならば躊躇うこともない。 無論一人で行くという関係上、ガウェインがついているとはいえ他マスターと積極的に戦うべきではないだろう。 一応ライダー曰く、大空洞の要塞化はキャスターがいれば効率よくいけるらしいので友好的な者がいれば勧誘を頼みたいと言っていた。時間があれば考えておこう。 だが、今はまだ日も出ていない。今はここでできることを進めておくべきだろう。 そういった形に会議をまとめ、各々やるべきことをするためのことを進め始めた。 と、ルルーシュは背後の英霊に声をかける。 「ガウェイン」 「はっ」 「何か気になることでもあったか?」 「いいえ、特には。どうかなさいましたか?」 「いや、なんでもないならいい」 気のせいだろうか。若干ガウェインの様子がおかしいように見えた。 (杞憂ならいいのだが、な) 【深山町・柳洞寺/早朝】 【衛宮士郎@Fate/ stay night】 [状態]:魔力消費(小)・ダメージ(小)・右手骨折(処置済み)・残令呪使用回数3回 ※参戦時期は桜ルート終了から半年後です。 ※勝利すべき黄金の剣(カリバーン)、全て遠き理想郷(アヴァロン)、赤原猟犬(フルンディング)、宝石剣ゼルレッチの投影が可能かどうかは後の書き手さんにお任せします。 【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/ stay night】 [状態]:健康 ※参戦時期は桜ルートで士郎に倒された後です(記憶は継続しています) 【金田一一@金田一少年の事件簿】 [状態]:健康・残令呪使用回数3回・ギアス無効 【ライダー(太公望)@藤崎竜版封神演義】 [状態]:健康 ※杏黄旗により、どこにいても円蔵山から魔力供給が受けられます。 ただし、短時間の内にあまりにも大量の魔力を吸い出した場合、霊脈に異常をきたす可能性があります。 【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】 [状態]:健康・残令呪使用回数3回 【セイバー(ガウェイン)@Fate/EXTRA】 [状態]:魔力消費(小)
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あなたがもし『神』になったら、あなたは何をしますか こちらは『俺ロワ・トキワ荘』にて進行中のクロスオーバー二次創作企画、『二次キャラ聖杯戦争OZ Re visited』のまとめwikiになります。 なお、本編には殺人や流血等の過激な描写が含まれます。閲覧の際は十分にご注意ください。 本スレは現在こちらです。 二次キャラ聖杯戦争OZ Re visite 支援掲示板はこちらです。 二次キャラ聖杯戦争OZ Re visited 未収録&対応中作品 タイトル 書き手(敬称略) キャラクター 状態 現在の予約 書き手(敬称略) 予約しているキャラ 投下期限 延長申請 メニューへ
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[二日目/朝] 聖杯戦争。 それは魔法少女たちによる釁られた戦いだ。 神父さんは、私にそう語って聞かせた。 寝ぼけた眼で、自分の左手に刻まれた三画の刻印を見やり、私は思う。 ああ。あれは、夢じゃなかったんだ。 月の綺麗な昨日の夜更けに、私が呼び出したサーヴァント。 ――ライダー。 三騎士のクラスには届かなかったものの、私の招来に応えてくれた英霊。 混乱のせいでどんなやり取りを交わしたかは覚えていないけど、ファーストコンタクトは概ね良好だったような気がする。 ……しかし召喚に成功した安堵のあまり、そのまま寝てしまったというのは我ながら、情けない限り。 肝心なところで締まらないのはそろそろ何とかしたいところだと真摯に思う。 それは兎も角。 私はこれで、とりあえずスタートラインには立てたことになる。 聖杯戦争がどういうものかは、神父さんから聞いた。 聞いたからこそ、私がやらなくちゃならない。 きっと、これは私にしか出来ないことだから。 魔法少女―― キュゥべえと契約し、騙された女の子たち。 私も、その一人。 どうしてキュゥべえが現れないのかはわからないけれど、だからこそ、今しかない。 昨日から仮病を使っていたから、部屋の時計が既に遅刻確定な時間を指していることにも驚きはしなかった。 家族に心配をかけるのは申し訳ないからあまりやりたくはなかった。でも、今日はしなくちゃならないことがある。そう前もって決めていたから、体調不良と嘘をついて、今私は学校を休んでいる。 サーヴァントとの、意思疎通。 召喚時に満足に出来なかった分、今日は一日たっぷり使って――お互いのことを知っておく必要があると思った。 ……いくら私でも、碌に会話すらしていないような状態で無防備に外出することが危険なことは分かる。神父さんによれば私は六番目のマスター。つまり、少なくとも五人の魔法少女が、既にサーヴァントを召喚してこの町へ潜んでいるのだ。 怖いと感じる想いは、勿論ある。 ただ、それ以上に強い想いがあるから、私はそこへ身を放り込むことが出来た。 ――悲しい。 初めて聖杯戦争について聞いた時、私はどうしようもなく、悲しくてたまらなかった。 そして思った。 見滝原の魔法少女として、やらねばならないことがあると。 それはあまりにも――きっと誰に聞かせても、反対されるどころか笑われてしまうようなバカげたコト。 ライダーのサーヴァント。 私の、サーヴァント。 彼は、どんな反応をするだろうか。 きっと、怒られるに違いない。 最初から関係性を悪くしてしまう未来が見える。 それでも。私には、胸の内を隠したまま、“仲間”と戦っていくなんて器用なことは出来そうにもないから。 だから、正直に話すことにした。自分が聖杯戦争に参加する理由。 聖杯戦争の、解体。 そんな――あまりにも矛盾した理由を。 ◆ 「ふああ……」 欠伸を押し殺すこともなく漏らして、――鹿目まどかは、リビングへと歩を進めていた。 家には自分以外誰もいないらしい。母の詢子はいつも通り会社勤めで、弟タツヤも学校へ行っている。ここまでは予想通りなのだが、この静けさからするに父・知久も何処かへ外出しているようだ。 どうしたんだろうと思わないでもないが……結果から言えば好都合だった。 ぺたぺたと、裸足で廊下を歩いていく。 程なくして、リビングへ辿り着いた。 扉を開け、ラップのかけられた朝ご飯が置いてあるテーブルへ近付く。 ベーコンエッグの乗った食パンに、レタスとトマトのサラダ。スープが冷めてしまっているのが少し残念だったが、そこは寝坊をしたこちらの落ち度として諦めるしかない。 「……あれ?」 ――と。 その時、初めてまどかはこの空間に存在する“違和感”に気付いた。 何故にそんなにぺらぺら言葉が出てくるのだろうと思うくらい、真実“捲し立てる”という表現こそ正しいであろうテレビショッピングの売り子。……問題は無論そこではなく、何故テレビが誰も居ないのに点いているのかということ。 消し忘れだろうか。不思議そうな表情を浮かべながら、まどかは振り返り。 硬直した。 比喩抜きに、その場で硬直した。 何故今の今まで気付かなかったのか、自分でも信じられない。 きっと、余りにも大きすぎる違和感だったから、見落としてしまったのだろう。 それほどまでに、その人物は鹿目まどかの世界の中で浮いていた。 薄ぼんやりと思い出される、昨夜の記憶。 そうだ、この人が―― 「ぬう……なんと興味深い代物! 現代にはこのように面妖な宝物が溢れているというのか…… 良い! 心が踊る! 余の時代にもこの男が居たならば、余の行軍も数倍は利便に進んだかもしれぬな」 テレビショッピングを前に、子供のようにはしゃいでいる大男。 明らかに現代の風景から浮いた外套と鎧帷子姿の、日本人離れした赤毛の巨漢。 その光景はあまりにもシュールレアリスムにあふれており、事実上初の邂逅であるというにも関わらず、まどかは呆気に取られてしまった。家の煎餅を勝手に食べていることなど、彼の豪快さを前にしては心底どうでもよく思えてくる。 この人が、私のサーヴァント。 三画の令呪によって繋がれた、無双の英霊が一騎。 未だ自分の存在に気付かず、テレビへ熱狂する大男へ……まどかは恐る恐る声をかけた。 「――あの」 「ほう! 濯いだ瞬間キュキュっと食器の汚れが落ちる油……面白い! 余の時代にも厨房に立つ者は常々肉の油が染み付いて取れんと嘆いておったものよ! 益々興味深いぞ、この時代は!」 「あの!」 ライダーの貌が、まどかの方を漸く向く。 意を決したように、呼吸を整え、問う。 「昨日のこと、あまりよく覚えてなくて……それで。 貴方が、私のサーヴァント――なんですよね。“ライダー”さん」 一瞬の逡巡すらなく。 間髪入れずに、ライダーはニヒルな微笑みを浮かべて。 そして返答する。 「――応とも。いかにも余が、うぬの呼び出したサーヴァントに他ならん」 威風堂々・豪放磊落―― この英霊を評するならば、そんな言葉以外にない。 たとえ今、過去、未来のあらゆる存在を連れてきても、この男を“折る”ことの出来る存在など居りはすまい。 まさに“王者”。 魔法少女として過酷な定めを背負っているとはいえ、ある程度の平和が確約された世に生を受けたまどかでさえ、この人物にはそんな感想を抱かざるを得なかった。 「我が名は征服王イスカンダル。昨夜にも名乗ったつもりであったが、記憶が朧気ならばもう一度名乗っておくとしよう。そして余からもだ、小娘。問おう」 イスカンダル――征服王。 歴史の授業で、耳にしたことがあった。 マケドニアの覇者。 アレキサンドロス三世、アレクサンダー大王、或いはイスカンダル。 世界史の分野にさほど詳しいわけではなかったが、そんな渾名や伝説から弱小さを感じる者など居るはずがない。 「――貴様が、余のマスターで相違ないな?」 「……は、はい! 鹿目まどか――私が、貴方のマスターです!」 良し。 破顔するライダーのサーヴァントを前に、まどかは思う。 この男ならば――どんな英雄豪傑と相対しても、負けはしないに違いないと。 そんな、価値観を一変させるような邂逅。 時間にして、午前九時三十分。 この時を以って、鹿目まどかの聖杯戦争は――真に“始まった”。 ◆ 「――ふむ。ならば小娘、貴様は聖杯を拒む……というのだな?」 喧しく騒ぎ立てるテレビの音声は、もう消えていた。 難儀な話題ではあるが、先延ばしにするわけにはいかない。 そう思ったまどかは、ライダーへと“本題”を切り出した。 ――即ち、自身の聖杯戦争に対する歪んだ体勢を。 願いを求めず、この戦争を止め、解体するという目的を。 ライダーはそれを聞けば、ふむと頷き……そして先のように、問い返す。 こくり。 まどかが頷けば、ライダーは腕組みして唸った。 「余はな、さしたる願いは持たん」 窓から見える外の風景へ目を向けて、ライダーは言う。 聖杯に託す願いがないという時点で、サーヴァントとしては異端である。 だが、この征服王に限っては頷ける話だ。 その生き方は伝承に聞くだけでも圧巻の覇道一色。 実際に言葉を交わせば交わすほど、聖杯という宝具を用い願いを叶える等と謳う風には見えなくなっていく。 「この現代を制覇し……軈ては征服し尽くてやろうとは思っているが、その道筋を聖杯なぞに委ねては征服王の名折れよ。故に余自身の手で成さねば意味がない。だが、聖杯が全くの無用かと言われれば、それも否だ」 実に他愛ない調子で世界征服を語る姿にも、まるで荒唐無稽なものを感じない。 彼ならばやってのけると、理屈より先に直感で理解してしまう。 しかし、彼が如何な豪傑であれども、その肉体はサーヴァントという器に縛られたままだ。 聖杯戦争が終われば消滅し、あるべき場所へ戻っていく。 「有り体に言えば、受肉だな。本来の肉体が戻れば、興の乗らん縛りとは無縁で動くことも出来るだろうよ。つまりだ、小娘よ。貴様の望みは解ったが、余を納得させるだけの理由が足りん」 ライダーにとってまどかの道へ従うことは、謂わば。 聖杯という、この現代に於いて再び夢へ挑む切符を、自らの手で破棄することを意味する。 当然、二つ返事で了承できるものではない。 まどかは、思わず黙り込んでしまう。 何しろ相手は、遙か太古から現世まで語り継がれる大王だ。 それを納得させるなど、容易なはずがない。 ――ふと。令呪の存在が頭に浮かぶ。 神父の説明を思い出す。 “令呪はサーヴァントへの絶対命令権だ。 対魔力のスキルを持つサーヴァントにも、令呪を受け入れる契約を交わしている以上は問題なく作用するだろう。 ――然しだ。令呪の効力は瞬間的で、且つその内容が明確であればあるほど効力を増す。 逆に長期的で曖昧な命令であれば……必然、その効力は弱くなっていく” ……駄目だ。 小さく頭を振って、頭の中に思い浮かべた可能性を否定する。 方針の強要は神父の説明へ当て嵌めれば、紛れもなく後者の部類。 それに、サーヴァントへ無理やり自身の考えへ頷かせるなどまどかとしても本懐ではない。 彼は道具ではなく、共に戦ってもらう“仲間”なのだ。 自分の思い通りに事を進めるために、令呪などという道具に頼るのは――言うまでもなく、ズルだ。 「……だって、悲しいですよ。こんなの」 「ふむ?」 気付いた時には、声が口から溢れていた。 聖杯戦争に参加したのは、確かに短絡的な一時の感情に任せた結果である。 けれど――まどかは今でも、その選択に後悔などしていない。 むしろ、ああしなければならなかった――とさえ、思っている。 「みんな、色んな願いを持って魔法少女になった。……でも、本来魔法少女っていうのは、夢と希望に満ちた存在。誰かを助けて、誰かの笑顔の為に行動できる――そんな、ユメみたいな存在のはずなんです」 願いは、数あれど。 最初はみんな、そういう思いで魔女と戦ってきたはずだ。 それが、魔法少女の真実を知るにつれて――歪んでいった。 聖杯戦争のような、魔法少女の本来のあり方と明確に異なった戦いに望みを託すしかなくなるほどに、彼女たちは追い詰められ、摩耗し、傷ついて、変わっていってしまった。 「魔女になりたくないのは私だって……誰だって同じ。私だって、運命を変えられるならそうしたいと思う。だけどその為に魔法少女同士で戦う、殺し合うなんて。そんなの絶対におかしいって、何度でも言い返せます」 だから、たとえそれしか希望がなくても。 聖杯戦争という仕組みに鹿目まどかは否を唱える。 破壊せんとする。流水の流れに背く川魚が如く。 「ライダーさんにとって、聖杯が必要なことは分かります。それでも、私だって譲れない」 ライダーは答えない。 ライダーは応えない。 ただ、少女の目をじっと見つめていた。 「私は――聖杯戦争を認めない」 確固と断ずる。 魔法少女同士で戦う趣向へ、まどかは納得出来ない。 先のことなんて何も考えていない、馬鹿げた理想論。 もしも非業の最期を遂げ、それを改変したいと願う英雄が召喚されていたならば、この陣営の決裂は不可避のものとなったろう。聖杯戦争の否定は即ち、サーヴァントの存在意義の否定と同義である。 だからこそ、彼女は運が良かった。 征服王イスカンダルとは、最果ての海(オケアノス)を目指した覇者(ライダー)。 見果てぬ夢、向こう見ずな願い、無鉄砲な戦い――そういうものに“慣れている”英霊。 それ以前に、第一。 一介の子女の分際で、サーヴァントへ毅然と決裂必至の喝破を飛ばしてみせる姿が、彼を不服にさせる道理はない。 「……言うではないか、それでこそこのイスカンダルのマスターよ」 ライダーが浮かべた表情は、笑み。 口にする言葉は、まどかへの賞賛であった。 まどかは驚愕に顔を染め、ライダーを見上げる。 大きくごつごつとした無骨な手が、桜色の髪の毛を無神経にわしゃわしゃと撫でた。 「気に入った。どれ、せめて飽きるまでは――貴様の妄言に付き合ってやろうではないか、小娘」 「……! 本当、ですか……!?」 「男に二言は無い。余が飽きるようなことがあれば話は別だがな……尤も」 不敵なものへ、笑みの形が推移する。 見据えるのは己がマスターでも、現代の景色でもない。 聖杯戦争。程なく訪れるだろう、英雄豪傑たちとの闘争だ。 剣士、弓兵、槍兵、魔術師、暗殺者、狂戦士。 その中には必ずや、自分よりも強大な英霊が存在することだろう。 「此度の遠征。退屈を想う暇すらも、与えてくれはせんのだろうなあ」 良し。 もう一度、ライダーは頷いた。 心が躍る。何処の英霊が来るか知らないが、存分に競わせて貰おうではないか。 魔法少女(マスター)、鹿目まどか。 騎兵(ライダー)、イスカンダル。 その主従が目指すは――“聖杯戦争の破壊”。 ■ステータス情報開示 クラス:ライダー 真名:イスカンダル 属性:中立・善 パラメータ:筋力B 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具A++ クラススキル: 対魔力:D 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。 騎乗:A+ 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。 ただし、竜種は該当しない。 固有スキル: 神性:C 明確な証拠こそないものの、多くの伝承によって最高神ゼウスの息子であると伝えられている。 カリスマ:A 大軍団を指揮する天性の才能。 Aランクはおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望といえる。 軍略:B 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。 自らの対軍宝具の行使や、 逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。 宝具: 遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ) ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:100人 「神威の車輪」による蹂躙走法。『神威の車輪』完全解放形態からの突進。雷気を迸らせる神牛の蹄と車輪による二重の攻撃に加え、雷神ゼウスの顕現である雷撃効果が付与されている。 猛る神牛の嘶きは通常使用時の比ではなく、静止状態から100mの距離を瞬時に詰める加速力を持つ。 神威の車輪(ゴルディアス・ホイール) 由来:ゴルディアス王がオリュンポスの主神ゼウスに捧げた供物であったものをイスカンダルが自身の佩刀「キュプリオトの剣」で繋いでいる紐を断ち切って自らのものとしたという故事から。 彼が「騎乗兵」たる所以である、二頭の飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)が牽引する戦車(チャリオット)。地面だけでなく、空までも自らの領域として駆け抜けることが可能。神牛の踏みしめた跡にはどこであれ雷が迸る。 キュプリオトの剣を振るうと空間が裂け、どこであろうと自在に召喚できる。戦車は各部のパーツを個別に縮小・収納が可能で、走破する地形に合わせた最適な形態を取ることが出来る。御者台には防護力場が張られており、少なくとも血飛沫程度なら寄せ付けない。 地上で通常使用した場合の最大速度は約時速400Kmほど。真名解放無しでも対軍級の威力・範囲を持ち、初見でのウェイバーの見立てでは「近代兵器に換算すれば戦略爆撃機にも匹敵」。キャスターが呼び出した膨大な数の海魔がひしめくトンネルも、雷撃を纏った掘削機の如く軽々と海魔たちを粉砕し踏破している。下記の『王の軍勢』と同時使用することもできる。 王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ) ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人 由来:マケドニアの重装騎兵戦士団。 召喚の固有結界。ライダーの切り札。 展開されるのは、晴れ渡る蒼穹に熱風吹き抜ける広大な荒野と大砂漠。障害となるものが何もない地形に敵を引きずりこみ、彼が生前率いた近衛兵団を独立サーヴァントとして連続召喚して、数万の軍勢で蹂躙する。 彼自身は魔術師ではないが、彼の仲間たち全員が心象風景を共有し、全員で術を維持するため固有結界の展開が可能となっている。要は、生前の軍団を丸ごと召喚・復活させる固有結界。 時空すら越える臣下との絆が宝具にまで昇華された、彼の王道の象徴。 征服王イスカンダルの持つカリスマ性を最大限に具現化したものであり、召喚される中にはライダー本人よりも武力に優れた者や、一国の王としてBランク相当のカリスマを具える者も複数いるらしい。これは彼が生前、個人として武勲を立てた英雄ではなく、軍勢を指揮して戦った英雄であることに由来する。 召喚された臣下はそれぞれ英霊として座にあるサーヴァントであり、全員がランクE-の「単独行動」スキルを持つためマスター不在でも戦闘可能。なお、聖杯戦争のルールに従って召喚されているわけではないのでクラスは持っていない。また、ライダーの能力の限界として、臣下が自身の伝説で有しているはずの宝具までは具現化させることはできない。 一度発動してしまえば近衛兵団はライダー曰く「向こうから押しかけてくる」ほか結界の維持は彼ら全員の魔力を使って行われるため、展開中の魔力消費は少なく済む。ただし、最初に彼が『英霊の座』にいる軍勢に一斉号令をかける必要があるため、維持は簡単でも展開そのものに多大な魔力を喰う。また、軍勢の総数が減るに従って負担が激増していき、過半数を失えば強制的に結界は崩壊する。 本来、世界からの抑止力があるため固有結界の中にしか軍勢は召喚・展開できないが、一騎程度であれば結界外での召喚や派遣も可能。劇中では英霊馬ブケファラスや伝令役としてミトリネスが結界の外にも現れている。 前の話へ戻る 次の話を読む
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やる夫が聖杯戦争に巻き込まれるようです ここは「やる夫が聖杯戦争に巻き込まれるようです」シリーズのまとめみたいなところです。 1の書いたサーヴァント&マスターデータをまとめただけです。 多分自由に編集ができる筈なので間違っている情報があれば修正お願いします。 現行スレ やる夫板(仮) やる夫が聖杯戦争に巻き込まれるようです Part.8 http //yy700.60.kg/test/read.cgi/yaruo/1228572927/l50 ググレカスコーナー- ナイトウィザード The Animation 天元突破 グレンラガン CHAOS;HEAD サイト内検索 検索
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前回までのマイケル・スコフィールドの第二次二次二次聖杯戦争は。 順風満帆だったマイケルの人生は兄であるリンカーンが暗殺犯として死刑判決を受けたことで一変する。兄の無実を信じ、自ら同じ刑務所に入り共に脱獄したマイケルだったが、逃亡劇の末に命も失うことになった。だがその時聖杯戦争への参加という天啓が彼に訪れ運命は大きく変わることになる。 聖杯戦争のマスターとしてアーチャー・ワイルド・ドッグを召喚し、戦いに飛び込んでいくことになった。 本選開始直後、多くのサーヴァントの戦闘の結果、冬木大橋は崩落し海へと沈むことになる。この事は魔力不足で倒れたマイケルに思いもよらない影響を及ぼした。搬送先の病院を拠点としていたアサシンと橋での戦闘から逃れてきたランサー組と期せずして遭遇したのだ。マイケルは一先ずの同盟を結ぶことになる。 一方、病院の外では戦局が大きく動いていた。三方からアルトリア、テレサ、そして兵部京介がそれぞれの思惑を胸に病院に接近するも、勘違いからアルトリアとテレサは冬木中央公園で戦闘になる。二騎のセイバーのたぐいまれなき戦闘に、更にカルナが介入し公園は焦土と化す。離れていてもわかる圧倒的な戦力差にマイケル達病院の主従は戦慄するも、そこに一人静観していた兵部京介が訪れて場は更に混乱することになった。消耗しているカルナを共闘して追撃し、ここで脱落させることを提案してきたのだ。マイケル達はこの無謀ともいえる強攻策を前に悩むも、一人先行した兵部京介が戦闘を開始したことと自分達が余力のあるうちに動かなければならないこと、そして扉間が死を覚悟してカルナに挑む決意ししたことで兵部京介の提案に乗ることを決断する。 遅れること数分、カルナと兵部京介が死闘を繰り広げるビルに到着した扉間の姿は、期せずしてカルナのマスターであるイリヤと瓜二つに変化していた。マイケルは逃亡生活の経験を活かして、扉間にカルナ主従の姿を撮影させてネットにバラ撒くという作戦を考え付いたのだが、万が一扉間が写ってしまった時のことを考えてランサー達を襲った「もう一人のイリヤ」の姿に変化させていたのだ。兵部京介と扉間の即席タッグは善戦し、ついにイリヤに手が届く。しかしあと一歩のところで殺害に失敗し辛くもそれぞれ逃げ延びることになった。魔力をほとんど使い果たした扉間は病院に戻るも昏倒し、辛うじて撮影した動画がマイケル達に託される。だがマイケルにはある変化が訪れていた…… アステカ文明は新大陸にあった他の文明と同様にヨーロッパやアジアのそれとは大きく異なっていた。発達した天文学や建築学があった一方で鉄器はなく、その宗教・神話にも様々な特徴がある。そして何より特異なのはその極端な軍国主義的統制的国家形態だろう。スパルタもかくやというその好戦性は特筆すべきものだ。ではなぜ、そのような文化を持つに至ったか? 一説では、文化が開放的か閉鎖的かは、食糧事情によって左右されるとある。余剰食糧が豊富ならば明るく開放的になり、逆に飢餓に襲われることが多いような文化圏では暗く冷たく、閉鎖的になるという。 私はこの説が真実かどうかはわからない。もっともらしいデマの可能性もある。だが、人が人を喰らうほどの、絶望的な飢餓に頻繁にあう文化が、アステカだとすれば、なるほど一応納得はいく。飢餓が人間を極端に効率的に合理的にするということだ。とは言っても、先進的な農耕技術を持つアステカが飢餓にあったとは思えない。あくまで文化としての食人だったのだろう。 だがそれは、文化であるにも関わらずそれだけの影響をもたらした、飢餓というものの途方もない大きさを示してはいないだろうか? 「マイケルさん?マイケルさん!?」 「ーー大丈夫だ茜さん、ちょっと目眩がしてね。」 スマホを片手に心配そうに顔を覗きこんできた茜にそう言ってにこやかに笑いかけると、マイケルも手に持っていた彼のスマホに視線を落とした。 今のは失敗だった。そうマイケルは心の中で反省する。他のマスターにいる前で大きな隙を見せてしまった。これでは殺してくださいと言っているようなものだ。 マイケルは震える指先でスマホを操作する。とにもかくにも問題なく動けるように見せなくてはならない。自分の症状に気づかれるわけにはいかない。今度は頭の中でそう考えながら、しかし体は正直なもので止めどなく汗が流れてくる。冷房が効いていることを差し引いても寒いというのに。 『アーチャー』と念話で話しかけようとしてきたのを感じて先んじて切り出す。日本人は阿吽の呼吸というものがあるらしいが、こういったものか、と漠然とマイケルは思った。 マイケルは、霊体化して姿の見えない二騎のサーヴァントと目の前でスマホ相手に悪戦苦闘している少女を順繰りに見渡そうとした。もちろん彼にサーヴァントは見えない。ただなんとなく、そこにいると思った。 アーチャーからのプレッシャーが増す。言葉を発さずとも、その威圧感は心臓を押し潰すようだ。もっとも今のマイケルはそんなこととは関係なく心臓が押し潰されそうなのだが。 『わかってるんだ……今ここで、決めておかないといけないって。』 スマホの画面には、ランサーの神々しい姿が逆光気味に写っている。これが、これから自分達が遅かれ早かれ戦うことになる相手。いったい何騎のサーヴァントがいれば勝てるのか、想像もつかない。そして少し画像を動かすと、ランサーのマスターと思われる銀髪でプレティーンといった年頃の少女が写る。思わず甥っこが頭に浮かぶが、頭痛でごまかした。 『ーー僕が合図したら、すぐに殺せ。』 一瞬、アーチャーから驚いた気配を感じた。事実、アーチャーは驚いていた。自分のマスターから、アマちゃんと思っていたマスターからその『許可』が降りることは半ば無いと思っていたからだ。マイケルを急かしていたのは義理立てのようなものであり最低限の忠誠心からだったが、まさかそれに応えるとは。 マイケルは顔をアーチャーがいると思われる方へ向ける。その視線は見えていないはずのアーチャーを目へと注がれ、そのあと発した念話は冷徹な決意が感じられた。 『この三人で、魂喰いする。』 マイケルにはもう、魔力がなかった。 本来ならば、マイケルは聖杯戦争の本選に進めるようなマスターではない。 マイケルには魔力がない。魂喰いをさせられるほどの非道さもないし、かといって調達するあてもない。サーヴァントにとって酸素のようなそれを供給できない以上、マイケルは必敗するはずだった。 だが、彼のサーヴァントは弱く、彼は賢かった。 極端に魔力消費が少ないアーチャーを常に霊体化させ、食事で魔力を補給させ、彼自身も体調を維持し続けることでアーチャーの消滅を本選まで先送りすることに成功したのだ。 だが、それにも限界はある。既に本選が始まった段階で魔力の不足は無視できないレベルだった。だから今こうして病院で車イスを使うはめになっている。そして、マイケルは知らないことだがアーチャーは一度曲がりなりにも戦闘している。ドラえもんを破壊するときとその前の伊達男との交渉の時の実体化はなけなしの魔力を根こそぎ持っていっていた。 そして、マイケルは見てしまった。あの圧倒的なサーヴァントを。何騎ものサーヴァントを蹴散らす太陽を。 それは、同盟相手のランサーがまるで月か星に思えるほどだ。 ーーマイケルは良心を持った男だ。なし崩し的に脱獄した仲間が危機に陥ったとき、見捨てずに助ける程度には。だが必要ならば恩人の善意も女性からの好意も利用してきたーー だから彼にはわかってしまう。彼の頭脳は、目の前のランサーさえどうにかすれば非力なマスターと気絶したアサシンという格好の魂喰いの対象がいることに気づいてしまう。同盟相手を僅かな時間で裏切ることが、最も合理的だと判断できる。 なぜなら、彼らもまた魔力がないから。互いが互いの栄養価の高い非常食になりえるから。 マイケルもアーチャーも、飢えている。目に写るものは、魔力の塊に見えた。 【新都・病院/2014年8月1日(金)1041】 【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】 [状態] 点滴、車イス、魔力消費(極大)、精神的な疲労(大)、衰弱(中)、覚悟。 [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 優勝を目指しているが‥‥? 1.他のサーヴァントなら……魂喰いしても…… 2.こうなったら病院に潜伏する。 3.予選と同じくキャスターとの同盟を狙うがあのキャスター(兵部京介)は…… 4.アサシンのマスターはどこだ? [備考] ●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。 ●自宅は新都の某マンションです。 ●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。 ●SEASON 2終了時からの参戦です。 ●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。 ●日野茜への好感度が上がりました。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 ●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。 ●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。 ●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。 【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】 [状態] 筋力(15)/C、 耐久(15)/C+、 敏捷(10)/D、 魔力(1)/E、 幸運(10)/D+、 宝具(0)/E 魔力不足(極大)、実体化に支障、魔力の不足により全パラメータ半減、魔力不足により宝具使用不可。 [思考・状況] 基本行動方針 優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。 1.マイケルを少し見直した。 2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。 3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。 [備考] ●乗り換えるマスターを探し始めました。 ●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。 ●ドラえもんでの魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】 [状態] 筋力(20)/B、 耐久(20)/B、 敏捷(15)/C、 魔力(15)/C、 幸運(15)/C、 宝具(0)/B、 霊体化、疲労(中)、魔力消費(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足により全パラメーター半減、肋骨にひびと内臓に損傷(どちらもまあまあ回復)、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。 [思考・状況] 基本行動方針 強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥ 1 敵襲に備える。 2 あさしん(千手扉間)が生きて帰ってきて安堵。 3 ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。 4 ますたぁ(茜)への申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。 5 あの爆発、あーちゃー(アリシア)は無事とアサシンは言ったが‥‥ 6 俺は…… 7 せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)と再戦し、勝利する 8 あの卑劣な作戦、やはりあさしん(扉間)は忍びの者……? [備考] ●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認しています。 ●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。 ●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。 ●病院内にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。また病院外でも地方紙で報じられています。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 ●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。 【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態] 魔力消費(大)、頭にタンコブ(応急処置済)、??? [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!! 1 .聖杯戦争という企画を頑張る! 2.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。 [備考] ●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。 ●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。 ●自宅は深山町のどこかです。 ●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。 ●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。 ●病院にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。 ●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。 ●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 ●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。 【アサシン(千手扉間)@NARUTO】 [状態] 筋力(15)/C、 耐久(15)/C、 敏捷(25)/A+、 魔力(9)/B、 幸運(5)/E、 宝具(0)/EX 霊体化、気絶、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。 1.??? 2.ランサー(カルナ)のマスターはーー。 3.マスター(りん)が他の組に見つからないように警戒している……ランサーのせいで無理そうだが。 4.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。 5.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定する 6.穢土転生の準備を進める。 7.他の組の情報収集に務める。同時にランサー達を何とか隠ぺいしたいがたぶん無理。 8.女ランサー(アリシア)との明日正午の冬木ホテルでの接触を検討し、場合によっては殺す。 9.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。 10.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。 11.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。 12.マスター(りん)の願いにうちはの影を感じて……? [備考] ●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。 ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。 ●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。 ●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。 ●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。 ●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。 ●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。 ●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。 ●九重りんへの印象が悪化しました。 ●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 ●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。アサシンが霊体化したため床に落ちました。
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【パーソナルデータ】 真名:陳宮 クラス:アーチャー 【特記事項】 キャスター適正あり エリア外からの攻撃が可能 【属性】 混沌・善・人 【戦闘コマンド】 近接攻撃:射程1 射撃攻撃:射程2 魔術攻撃:射程2 【ステータス】 耐久力:20 魔力量:120 筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 【クラススキル】 全クラス共通:サーヴァント以外から受けるダメージ-10 《クラス特性》 隣接したエリアに存在する陣営の数がわかる(出会ったことのある陣営であればどの陣営かもわかる) 《対魔力:C》 魔術攻撃によって受けるダメージを-3。 30%の確率で受けるデバフ効果を半減。 《単独行動:A》 単独行動による能力下降が1段階になる。 単独行動に置ける魔力減少-5。 【サーヴァントスキル】 《軍師の本懐:A》 タイミング:セットアップ・メイン リキャスト:7 魔力40消費、自身以外の味方1体が与える物理ダメージ+1d4+1(3R)、耐久力+15。 なおその味方がバーサーカー・狂化持ち・狂人持ちだった場合、さらに与えるダメージ+2d3+2(3R)。 《軍師の忠言:B++》 タイミング:セットアップ・メイン リキャスト:5 魔力20消費、味方全員が受けるダメージ-4(3R)、耐久力+5。 その後、自身以外の味方の魔力をを10回復。 《軍師の指揮:B》 タイミング:セットアップ・メイン リキャスト:5 魔力30消費、以下の効果を味方全員に付与。 ①与えるダメージ+1d8(3R) ②命中+15%(3R) ③魔力を10回復(自身以外) 【魔術】 《強化魔術》 タイミング:メインフェイズ リキャスト:5 射程0。魔力20消費、5Rの間対象1体の与えるダメージ+1d10、筋力または魔力を1段階上昇させる。 《エンチャント:ウェポン》 タイミング:セットアップフェイズ リキャスト:3 射程1。魔力15消費、5Rの間、対象1体の筋力を1段階上昇させ、物理攻撃によって与えるダメージ+1d8 【宝具】 《掎角一陣》 ランク:C 分類:対軍宝具 射程:3 タイミング:アタックフェイズ 自身の味方1体を選ぶ。その後ダメージを+2d10+3d6+4した状態で1エリアに対して射撃攻撃を行う。 その後、選んだ味方を即死させる(回避不可)。 《覇道を征く者よ、我が元に武を》( ゴッド・フォース・レプリカ ) ランク:B 分類:対人宝具 射程:2 タイミング:セットアップ・メイン 自身以外の1体に以下の効果を付与する。 ①全能力値+1段階(3R) ②与えるダメージ+2d4+2(3R) ③判定+10%(3R) ④受けるダメージ-5(3R)
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友だちにならないかと差し伸べられた手に、最高の友達Pも起承転結も自らの手を重ねることはできなかった。 あの吐き気を催す邪悪ことDIOの書き手を称する者の友だち発言を、誰がその通りに受け取れようか。 原作の花京院や漫画ロワの刃牙のように、洗脳されることを危惧してしまうのは当たり前だ。 それでいてすぐに手を跳ね除けることもできなかった。 警戒されるのも厭わず――どころか、まるで警戒させたいのだと言わんばかりにDIO書き手と名乗るセイヴァー。 その狙いは明白だ。 つまりは、脅迫。 こちらには洗脳という手段もあるのだぞと示すことにより、それならまだ自ら軍門に下るほうがましだと思わせるようにしているのだ。 『……起承転結、これって』 『ええ。洗脳をチラつかせた上で、こちらを引き入れようとしている。 つまり、できればボクたちに意思は奪いたくはないということ。 彼らはボクたちに単なる操り人形にする以上の価値を見出しているのかもしれません』 ルルーシュの姿をしたDIO書き手。 いささか偏見かもしれないが、いわば洗脳のプロフェッショナルだ。 そもそもが隠れ潜んでいた家を消し飛ばされた今、ばっちりと目を合わせてしまっている。 ギアスをかけようと思えばかけ放題な上に、それを避けようと目を瞑れば致命的な隙をさらしてしまうことになる。 強硬手段に出られた場合、状況としては詰んでいると言っても相違はないのだ。 相手がこちらに価値を感じているというのなら、それは不幸中の幸いだ。 武力を盾にしてきているとはいえ、相手ができれば比較的穏便に済まそうとしてきている以上、交渉次第では切り抜けられるかもしれない。 ただ、最高の友だちPにも起承転結にもセイヴァーたちが自分たちの“どこに”価値があると捉えているのかが分からない。 まずはそこから探らなければ交渉を始めることさえできない。 『……マスター、前にはボクが出ます。 考察も手伝います。 ただ、交渉の主導権はマスターに任せてもよいでしょうか?』 そのための探りを入れるのを、起承転結は最高の友達Pに任せることにした。 何もそれはサーヴァントとマスターという関係を重んじてということだけではない。 セイヴァーに目をつけられた先の失敗を省みて、交渉という他の書き手との探り合いには、リレー書き手である最高の友達Pの方が向いていると判断したからだ。 非リレーロワには非リレーロワで、非リレーロワチャットという文化もあったのだが、あくまでも非リレーロワ内のそれぞれのロワ書き手による雑談チャットだった。 一つの企画でしのぎを削る書き手同士による交渉とはまた別物なのである。 『わ、私は加蓮なだけあって見知らぬ他人とのコミュニケーションは上手ってわけじゃないんだけど。 やってみる。でもその分補助はお願いね。 モバマスロワって一般人ロワな分、生きたり殺したりに精一杯で、考察や探り合いってロワでもないから』 マスターに頷きを返すと同時に、起承転結は前に出る。 眼鏡をかけた青年だった姿は、一瞬にして軍服めいた服を着た大男へと変じていた。 元となっらキャラクター名を“傍若無人”。 まわりに他人がいないかのような自分勝手な振る舞いをする、という意味の四字熟語だ。 一望千里が千里眼を得ていたように、傍若無人もまたあるルール能力を得ている。 ただしそれは一望千里のようなメリットではなく、デメリット能力だ。 即ち、傍若無人と化した起承転結は《人をモノとしか見れない》。 人を人としてとらえられない、などというかわいらしいものではない。 四字熟語ロワにおいて傍若無人の目には人の姿は映らず、当人が自分の一部として認識している服とかさえも見えなかった。 傍若無人が認識できたのは、能力が起こす現象や武器、デイパック、そして首輪だけという重すぎるデメリットだった。 ある種の制限とさえ言ってもよいだろう。 今の起承転結も大体は原典の傍若無人と一緒だ。 彼に見えるのは敵の武器・宝具、及びそれらが起こす現象、デイパック、そして令呪だけなのだ。 「ほう……。変身スキル、或いは宝具かな?」 「さあな。己の手口をモノどもに教えてやる言われはない」 それだけのデメリットを背負ってまでこの姿に変身する意味はもちろんある。 一つはハンデをものともしない戦闘力。 傍若無人は制限を課して尚、起承転結が変身できる四字熟語の中では最強戦力の一つだ。 並ぶのは東奔西走と切磋琢磨くらいだが、前者は移動制限が重く傍若無人に敗北し、後者は成長型のため、今はまだ弱いままだ。 ……とはいえ、敵バーサーカーが見せたチートの前ではその最強戦力でさえ勝ち目はあるかどうか。 なので今、この姿に変じたのは、単純な戦力とはまた別の目的だ。 デメリット能力“傍若無人”は極めて限られた相手にのみ、有利に働くことがある。 見たものの顔をずたずたに引き裂く“破顔一笑”が通用しなかった逸話から、視覚に訴えかける能力を無効化できるのだ。 『マスター、奴の令呪はどこに刻まれている?』 『眼、眼だよ。ギアスとは別側の右目に令呪を宿しているみたい』 それでいて視覚制限がかかるとはいえ、まったく認識できないわけではない。 全ては計算によって補える。 起承転結が認識できる令呪と武器、宝具を元に、一望千里で覗き見たセイヴァーとバーサーカーの容姿を脳裏で掛け合わせていく。 令呪が右目にあるというなら、等間隔の位置に左目――ギアスがある。 あとは令呪の傾きなどから、右目の視線を推測。 最高の友達Pがギアスに晒されないよう、盾になれる位置に陣取り続ければいい。 「 それで。友達にならないかとのことだけど。アンタの言う友だちって どういうものなのよ。 私、友達にはうるさいんだからね。伊達に最高の友達Pなんて呼ばれてはいないの」 「ふむ、君のあだ名は最高の友達Pというのだね。 なるほど、確かにそのような称号を冠する存在に、友達を語るというのはいささか緊張する話だな。 よければまずは君の方から、この私に友達についてご教授願いたい」 どの口が言うか。 そう思いつつも、ぐっとこらえる。 今は交渉を成り立たせることが先決だ。 会話の糸口を与えられた以上、乗らないわけにはいかない。 「奇跡を、分かち合えた人」 この広いネットの世界で出会えたこと、そこだけをとっても一体どれだけの確率だろうか。 ましてや一緒に小説を書くだなんて奇跡としか言いようがない。 だから少女にとって、友達とは奇跡を分かち合えた人。 それ以上は必要なく、それだけで十分だった。 「なるほど、いい答えだ」 心底聞き入るように大きく頷く。 大仰な仕草ではあるが、そこには少女を馬鹿にするような響きは一切なかった。 少女の語った奇跡を大袈裟だと笑う書き手などいはしまい。 盛況だ、完結だと騒がれているロワでさえ、主力とされる書き手の数はそう多くはないのが常だ。 十を超える作品を投下した書き手が、十人以上いるロワは果たしてどれだけあるだろうか。 企画主やトップ書き手が一人で黙々と作品を書き続けるロワや聖杯とて珍しくはないのだ。 ならば信頼できる書き手と共にリレーをし続けられたならそれは確かに奇跡という他にないだろう。 そう納得した上でセイヴァーは口を開いた。 「ならば私も答えよう。私にとっての友とは即ち強敵と書いて“とも”であると」 ルルーシュの顔には似つかない、しかし魔王ゼロのマッチョボディにはこれ以上無くマッチした世紀末理論を口にするセイヴァー。 「殴られるままではない。すぐに折れる根性なしでもない。 殴り返してくるような、自分から殴りかかってくるような、そんな強敵。 殴られる覚悟をもって殴ってくる相手。 それこそが私の言う友だちなのだよ」 初代二次聖杯書き手らしいめまいを覚えそうになる答えではある。 そう起承転結は思ったのだが、意外にも最高の友達Pは感じ入るところがあったようだ。 「殴り合うのは嫌だけど……分からなくもないよ。書き手は、友達で、でも、共に高め合えるライバルなんだ。 私の友達は最高の仲間だけど。……私だって書き手だもの。 私の作品が一番おもしろいんだって。自負も誇りもあるよ」 「ふ……っ、そうか。なるほど、君は確かに書き手聖杯に喚ばれるだけのことはあるみたいだ。 よく分かっているじゃないか」 「まあねー♪」 ふふふ、くくくとにこやかではないものの、笑い合う二人。 リレー書き手同士、どこか通じ合うところのある様子に、起承転結はもやもやして、浮かび出た疑問を横から口にする。 「待て、セイヴァー。己がモノどもにとっての強敵になれると? 買いかぶりすぎではないか。モノどものサーヴァントはいわば究極の一。 対する己は無限どころか有限しか用意できぬ。 モノどもを相手取るにはいささか役不足だと思うが、如何に?」 笑い合っていた最高の友達Pもはっとなり口を抑える。 書き手としては自分こそが一番面白いんだという自負はるが、それとこの場における強さとはまた別だ。 モバマスロワは一般人ロワである以上インフレバトルには程遠く、四字熟語ロワもどちらかというと理屈や解釈、策略がものをいう能力者バトルだ。 正面からのごり押しチート相手にやりあえるかと言われれば難しい。 「ふむ、確かに私のバーサーカーは素晴らしいサーヴァントだよ。 書いていいのは書かれる覚悟がある者だけだ。殺していいのも殺される覚悟がある者だけだ。 そう言わんばかりの偉業を成し遂げた書き手だからな。 私のサーヴァントとして、強敵として、これ以上なく相応しい一騎だと自負するよ」 唐突なマスターや敵対者からの賞賛に、まるで恐縮ですとでも言わんばかりに縮こまるバーサーカー。 そんなサーヴァントに謙遜は止せと告げてからセイヴァーは起承転結へと向き直る。 「だが、私のサーヴァントが如何に強力だとはいえ、君が自分を卑下する理由にはなるまい。 私は知っているぞ、起承転結。 四字熟語ロワが無事、完結したということを。おめでとう、正真正銘君は我々と同じステージに立った」 ぱちぱちぱちと拍手を贈るセイヴァーとバーサーカー。 口調こそ尊大だが、そこには確かに、たった一人でロワの全てを書き上げた存在への敬意があった。 「そんな君なら、ガチバトルだけがパロロワの華でないことは知っていよう。 四字熟語ロワは最後の最後までネタばらしが強烈なロワだったそうじゃないか」 ぶんぶんと首を大きく縦に振るバーサーカーを尻目に、セイヴァーは自らの要求を口にする。 「つまり、だ。君にはこの書き手聖杯戦争のネタばらしをして欲しいのだよ! 有り体に言えば考察だよ」 最高の友達Pは納得する。 確かに考察なら戦力に関係ないなく可能だ。 まあ殺し合いに乗っていない所謂考察キャラがほぼいないモバマスロワでは、実はこれもまた縁遠いことなのだが……。 そもそも一般人ロワの極致であるモバマスロワは、誰も彼もが“アイドル”や“ヒロイン”をするのに必死であり、考察なんてする余裕が無いのだ。 当時未登場だった一ノ瀬志希はともかく、池袋晶葉辺りが参加者にいれば話は別だったかもだが……。 まあ同じモバマスでも参加者面子の違うシンデレラガールズロワも阿鼻叫喚なことになっているのを見るに、そう上手い話はないか。 「考察、だと? モノどもは己等と拳を交えるのではなく、どちらが早くこの書き手聖杯戦争の謎を解き明かせるのか、それを競おうとでも言うのか?」 一方、そこでまだ納得できていないのが起承転結だ。 バトルではなく考察ならば相手になるというセイヴァーの理屈自体は理解できる。 しかし考察というのなら、何を考え、何を解き明かすのか、その対象は必要不可欠だ。 そしてことパロロワにおける考察対象と言えば相場は決まっている。 それは首輪解除の方法であり、それは殺し合いからの脱出方法であり、更には殺し合いそのものの謎――主催者の正体や目的、倒し方の解明だ。 書き手聖杯は聖杯企画の常として首輪はないが、大筋では大差ないはずだ。 ……これはことを穏便に済ませられる可能性も出てきたかもしれない。 考察を競うというのは非リレー書き手である起承転結にはやはり分からない感覚ではあるが、つまるところリレーだ。 セイヴァーたちはリレーを望んでいる以上、起承転結たちを殺して終わりにはしないだろう。 競う対象が考察だというのなら、ギアスによる洗脳も免れれるかもしれない。 洗脳により思考を縛られれば、真っ当な考察なんてままならないからだ。 うまくそう話を持っていきさえすれば……。 「そうだとも。私が見るに、君ならば私たちにかなり踏む込み食らいつける敵になれる……っ!」 だがことはそう甘い話ではなかった。 灯りかけた希望は、セイヴァーの発した一言により、一気に闇へと呑まれていく。 「……“私たちに”、だと? どういうことだ。まるで自分たちこそが解き明かされる側だと言わんばかりのその口調……まさか」 セイヴァーたちの奇妙な言い草に、何かを察した起承転結が、自らの手足に目を向ける。 今、自分が変身している傍若無人は四字熟語ロワにおける最強格の一人であり、ラストマーダーでもあったが、それ以上に大きな役割を負っていた。 参加者でありながらも主催者の手のものでもあるその役割とは、即ち―― 「モノどもはジョーカーだと言うのか……?」 「Exactly(そのとおりだよ)」 起承転結と友達Pに戦慄が走る。 ジョーカー――参加者の中に紛れている主催者側の刺客であり、パロロワの華の一つだ。 最初から主催者側の人間のこともあれば、主催側から話を持ちかけられるなどして通常の参加者がジョーカーになるパターンなどもある。 得てして主催者側の補助を受けていたり、元から強いキャラクターが選ばれることもあって、作中では猛威を振るいがちだ。 四字熟語ロワとモバマスロワにおいてもそれは変わらない。 四字熟語ロワのジョーカー、傍若無人。彼は四字熟語ロワ終盤の立役者にして、四字熟語ロワそのもののキーキャラクターの一人であった。 モバマスロワのジョーカーはとにかく派手だ。 なんと強力な支給品を配られたジョーカーが5人もいた。 どころか主催の手により念入りに特訓させられた真のジョーカーとも言える“悪役”が一人。 更には追加の“悪役”がまた一人と明かされた程の大盤振る舞いだ。 『まさかジョーカーからの接触だなんて……。 ううん、でもこれってチャンスなのかな。 主催者側との取引って得てして情報や装備の優位を得られるものだし……』 驚愕しつつも前向きに算段を進める友達P。 優勝狙いの主従にジョーカーから自軍に引き込もうとするかのような取引を持ちかけられたのだ。 そう考えてしまうのも無理はない。 けれども起承転結はセイヴァーたちの言い草に引っ掛かりを覚えてならなかった。 四字熟語ロワにおいてジョーカー傍若無人が持ちかけてきた謎の考察は、書き手聖杯を解き明かすことであり、主催者側を不利にする対主催的な行いだ。 ジョーカーがわざわざ主催者に不利になる取引を自分たちに持ちかけるとは腑に落ちない。 セイヴァーが言うように単に敵を求めているだけなのか。 それとも主催者たち自身が、謎を解き明かされることを望んでいるのか。 はたまた傍若無人がそうであったように、セイヴァーたちにも主催者の思惑とは異なる独自の狙いがあるというのか……。 「やれやれ、そう難しく考える必要はあるまい」 起承転結の疑念を感じ取ったのだろう。 セイヴァーは肩をすくめると、あっさりとジョーカーとしての使命を明かしにかかる。 「私たちはジョーカーであり、物語の進行を促すのが使命ではある。 だがそれは一般的なパロロワのように最後の一人になるよう殺し合いを促す、というものではないのだよ。 優勝ルートでもいい、脱出ルートでもいい、対主催ルートでもいい。それ以外でも構わない。 書き手聖杯を完結させる手助けをする。それが私たちの任務なのだよ」 なるほど、書き手聖杯戦争ならではの使命だ。 書き手としてこれ以上の説得力を持つ使命はあるまい。 起承転結は納得し、だからこそ、警戒の度合いを極限まで引き上げる。 物語の起点である主催者側や聖杯戦争を考察させることは、核心へと迫る行為であり、書き手聖杯戦争を推し進めることに間違いはない。 ただ、単に考察させたいだけなら、わざわざ聖杯狙いであり何の考察もしてこなかった自分たちを捕まえて考察を迫る必要はないはずだ。 それらしい考察をしている主従や、対主催の主従を見つけてヒントを与えるでもしたほうが手っ取り早い。 まさか自分たち以外の全員が全員かの勝利エンドで有名な漫画ロワ書き手で、考察を他人に丸投げして好き放題になぐり合ってるわけでもあるまい。 なのにセイヴァーたちはわざわざ起承転結たちに会いに来た。 千里眼を察知したからいい機会だと思った? 起承転結たちが聖杯狙いだとは知らなかったから? はたしてそんなたまたま偶然の話だろうか。 セイヴァーからは強い確信が感じられる。 起承転結たちなら書き手聖杯の謎を解き明かせるという強い確し――待て。 奴は、セイヴァーはなんと言った? “起承転結たち”ならば? 違う、さっき彼はこう言ったのだ。君ならば私たちにかなり踏む込み、食らいつける敵になれる、と。 “君”ならば。 瞬間、最悪の想像が脳裏をよぎる。 起承転結の中でパズルのピースが噛みあっていく。 まさか、そんな、いや、けれど。 待て、はやるな、まだそうと決まったわけではない。 決めつけるにはあと一押しが足りない。 その一押しが本当に自分にあるのか。それを確かめるために起承転結は考察へと没頭する。 セイヴァーたちが望んだように、書き手聖杯の謎を紐解いていく。 『……起承転結? どうしたの押し黙っちゃって。ねえ?』 不安そうなマスターの声も。 「ようやく気づいたか……」 面白がるセイヴァーの声も置き去りにして思考を走らせていく。 考えて、考えて、考えて、考えて……。 「ああ、そうか、そうなのか」 起承転結は己が最悪の予想に逃れようのない裏付けを得てしまった。 「確かに“己”は書き手聖杯戦争を紐解ける位置にいるのやもしれぬ。 何故ならこんなにも書き手聖杯戦争と四字熟語ロワは似ているのだから」 あるアプリを開いて見てしまうことで参加させられてしまう殺し合い。 名前と記憶を奪われた書き手たち。 代わりに与えられた参加者たちの存在そのものとなる意味のある文字列。 書き手としてのトリップ。 所属ロワでのあだ名。 そのあだ名や作品を解釈することで得た容姿と能力。 似ている、なんてものじゃない。 こんなにも四字熟語ロワと書き手聖杯には参加者たちのあり方に類似点が存在していた。 少し考えれば気付けたはずだ。なのに起承転結はそうしなかった。 何故か――。何が起承転結に考察させなかったのか。誰が起承転結から考察の機会を奪ったのか。 その存在に思い至るや否や起承転結は脇目も振らず絶叫した。 「逃げろ、マスタアアアアアアアアアアアア!」 え? と呆けた声を出す最高の友だちP。それこそが起承転結の思考を制限したものの正体。 例外も多々あれど、基本、純粋な優勝狙いのマーダーは主催者やロワの謎について考察する必要がない。 主催を乗っ取ろうだとか、主催者の力を手に入れようだとか考えないなら、優勝狙いにとって主催者は敵ではない。 主催者について考えるよりも、敵である他の参加者対策を練るなど、殺し合いに勝つことに全力を注ぐ方がずっと有意義だ。 それこそ考察なんて全くしないでただただ他の参加者を殺したっていい。 パロロワにおいて優勝ルートの方がずっと簡単だとか言われるのはこの辺りが原因だ。 だからこそ、起承転結に書き手聖杯戦争を考察させたいセイヴァーたちにとって聖杯狙いのマスターである友だちPは邪魔なのだ。 人質にとるなり脅して令呪で命じさせるなり手段がないわけではないが、どれも問題が残る。 友だちPが存命かつ危機となれば焦りや心配のあまり、肝心の考察がおざなりになりかねない。 思考制限のかかる洗脳なんてもってのほかだ。 なら、起承転結の枷であり、不確定要素にもなりえる現マスターには消えてもらった方がいい。 普通のサーヴァントならマスターの消滅=自身の消滅だが、起承転結は非リレー書き手だ。 単独行動の上位互換スキルを持っており、マスターを失っても、現界を維持できるどころか、各ステータスに補正がかかる。 起承転結に四字熟語ロワ書き手だからこその真価を発揮してほしいセイヴァーたちからすれば至れり尽くせりである。 「交渉決裂か」 やれやれと肩をすくめるセイヴァーたちが動き出すよりも前に、彼らの思惑を察知した起承転結は打って出ていた。 友だちPに逃げろと警告しつつも、抜き放った武器の名は『蟷螂之斧』。 四字熟語ロワにおいては四字熟語の解釈より生まれた各ルール能力に僅かながら抗える特殊な武器だ。 書き手聖杯戦争では効果対象が拡大され各書き手の能力にも幾らか対抗できるその武器を。 起承転結は力の限り、セイヴァーたちの立つアスファルトの大地へと投げつける。 するとどうしたことか。大地は罅割れ、大きな崩落を起こす。 起承転結が変身している傍若無人は、強マーダーだったとはいえ、チートパワーの持ち主というわけではない。 ただ、傍若無人は原典においてこれと同様の現象を起こしていた。 四字熟語ロワの会場もまた、ルール能力で生み出されていたが故に、蟷螂之斧で干渉できたのだ。 起承転結はその原作再現が起きることに賭けた。 書き手聖杯戦争が四字熟語ロワと似ているというのなら、この会場もまた何らかの書き手の能力で生み出されたものではないかと推測してのことだ。 結果、彼は賭けに勝った。 期待していた以上に大きな地割れが起き、セイヴァーたちを呑み込んでいく。 けれどもこの程度で終わる相手だとはどうしても思えなかった。 だからこそ起承転結はバーサーカーがセイヴァーを抱え、奈落の底から大跳躍してくるよりも早く、追撃に移る。 「 はぁ………っ! 」 変身するのはギャルっぽい女子大生こと青息吐息。構えるのは拡声器。ルール能力は氷の吐息。 今の起承転結の吐息は凍える吹雪だ。 そしてその射程距離は息を吐く音の聞こえる範囲まで拡大することができる! 「 永久、凍土! ぐずぐずしてないで、早く逃げてよ、マスター!」 氷竜のブレスの如き全力の吐息は見る間に世界を真白く覆い、凍りつかせていく。 青息吐息を用いた狙いは三つ。 一つ、セイヴァーたちが昇ってくるよりも早く、地割れの裂け目を氷で塞いで閉じ込めること。 二つ、閉じ込めるのに失敗したとしても極低温により、敵の動きを鈍らせること。 特に生身のマスターであるセイヴァー相手には効き目があると願いたい。 三つ、温度差から生じたこの真っ白な蒸気で、敵の視界を奪うこと。 これら三つのどれもが言ってしまえば時間稼ぎだ。 友だちPを少しでも遠くへ逃がすための。いや、それ以前に―― 「嫌! 逃げない、逃げられるわけないよ、起承転結。 起承転結を置いて逃げるだなんて、私にはできないよ」 マスターに逃げるよう説得する、そのための時間稼ぎだ。 「あたしは大丈夫だから。あいつらにとってあたしは生かす価値があるの。 だからマスターを逃がしてもあたしだけでも捕まえれればあいつらの気は済むかもしれない」 あくまでもセイヴァーたちの目的は、起承転結に考察させることだ。 念には念をと友だちPの排除に乗り出してはいるが、友だちPを逃がしたうえで、 友だちPの無事と引き換えに考察を買って出れば、妥協してくれる可能性がないわけではない。 「マスター。お願いだからあたしを使ってよ。何も死ねって言わせたいんじゃないの。 盾にしたりしてもいい。無茶な指示をしてもいい。あたしはそれもリレーだと思って全部受ける。 だから、必ず生き延びて。 マスターの心の痛みもあたしのせいにしていいから。実際あたしの蒔いた種に、マスターを巻き込んじゃったんだし」 一望千里で覗き見たから、セイヴァーに感知され、目をつけられた。 四字熟語ロワと書き手聖杯戦争の類似点から、考察役として見込まれた。 起承転結なんてサーヴァントを引き当ててしまったから、友だちPは命の危機に晒されている。 全部が全部、自分の責任だ。 だからこそ起承転結は覚悟を決めて一人で全てを背負おうとする。 「違うよ、そんなのリレーじゃない! そりゃたまにぶん投げることもあるけど、リレーは友だちに押し付けることでも強要することでもないよ! 補い合いだって、分かち合いだって、私、言ったじゃない……!」 そんな起承転結の覚悟が、最高の友だちPには哀しかった。 違う、そうじゃない、そうじゃないのだ。 起承転結に教えてあげたかったリレーをすることの楽しさは、こんなんじゃない。 「たまたま、たまたまだよ。リレーにはよくあることなんだよ。 誰かが気づかぬ内に大事なフラグを折っちゃったとか。 自分の書いた話が思わぬ解釈をされてリレーされちゃったとか。 オリジナルの支給品が想定外の火力に設定されてしまったとか。 そんなのよくあることなんだよ!」 書き手は、エスパーじゃない。ミラクルなテレパシーは使えないし、熊本弁だって誰もが翻訳できるわけではない。 行き違いだってあるし、間違いだってある。 だけどそんな時、そこで終われない、終わらないのが書き手なのだ。 書き続ける限りいくらでもフォローできる。後付けだってできる。 こんな理由があったんだとか。こういう心情だったんだとか。 折れたはずのフラグを拾って。ずれてしまった展開を活かして元のプロットよりも劇的な方向へと持って行って。 時に自分でやってそれ見たことかと悦に浸り。 時に誰かの頑張りを目にしてその手があったかと感嘆して。 それがリレーなんだ。繋がり続ける限り、いくらだって未来がある。物語を続けていける。 「それにね、起承転結。私には、分かるの。 もしもここで起承転結を置いて逃げたとしても、絶対に戻ってきちゃうって。 起承転結は知らないかもだけど、そういう話を私、書いたんだよ?」 それはある愛の話のひとかけら。 友に夢を託され逃がされた少女が、それでもと自らの我侭を貫きに戻ってくる話。 ……戻って来た時にはもう、全ては終わりへと向かっていた、そんなお話。 「もう少し早く来てたら……。そんな後悔を私はしたくない。 安易な二度ネタや原作再現なんて御免よ。 せっかく自作を三次創作するというのなら、目指せ原作越えよ!」 どうせ戻ってくるのが分かっているなら、最初から最後まで連れ添いたい。 最後まで、なんて言ってるけど負ける気なんてさらさらない。 相手は確かに超が付くほどの強敵だけど。 こっちは一般人でしかないけれど。 それでも同じ書き手だ。書き手という土俵でならいくらだって戦えるはずだ。 大丈夫。大丈夫。大丈夫。 リレー書き手としての経験がある。令呪だってある。足を引っ張るだけにはならない。 最高の友だちPは起承転結に手を差し伸べる。 「一緒に戦おうよ/リレーしようよ、起承転結。 私たちはマスターとサーヴァントである以上に、友だち、なんだから。 どんな強敵でも、ふたり、いっしょなら、こわくなんて、ない。でしょ?」 泣きそうな、それでいて決意の籠った眼差しと共に差し伸べられた手は小さく、けれど確かに震えていた。 それは命懸けの戦いへの恐怖か、はたまた起承転結に拒絶されることを恐れてか。 どちらにせよ、起承転結がその手を取れば、最高の友だちPの震えは止まるであろう。 今、この少女を、最高の友だちPに勇気を与えられるのは起承転結だけだ。 でもそれは、終わりを意味する。 この手を取った時、起承転結と最高の友だちPに待ち受けるのは避けようのない別離だけだ。 それでも。 その震えを止めたいと思った。 この少女だけはなんとしても生かしたいと願った。 だから。 起承転結は。 「ありがとう、マスター。あたしの、最高の友だち」 手に、手を重ね、そのまま最高の友だちPを引っ張り抱き留め、 「え、ちょ、起承転結、顔、顔が近い!」 顔を赤くする親友の胸元にそっと手を添え、 「それとごめんよ。実は私も書いてたんだ」 おかっぱ頭にモノクロの服を着た男へと姿を変える。 「本当に大切な人を守るために、その大切な人さえも騙し続けた、そんな男や女の物語を」 それで、終わり。 重ね合った掌は、もう二度と、交わることはない。 何故ならそれが今の起承転結の能力だから。 ルール能力“心機一転”。 効果は、胸元を触れた相手のスタンスの反転。 ヒーローを志した少女は善人を殺し悪を守るようになり。 殺し合いから目を背けていた優柔不断な青年は、最善の行動を取って生き残ろうと決意する。 なら、絶体絶命の危機を前にして尚、サーヴァントとの友情を掲げ、共に戦い抜こうとしていた少女がどうなるか。 「起承転結」 言うまでもない。 「令呪を以て命じる。死んでも私が逃げる時間を稼いで」 自分が生き残るために、サーヴァントを平気で死地へと赴かせる、そんな友情マン@ジャンプロワの出来上がりだ。 ああ、全く。我が所業ながら反吐が出る。 大切な人の心を歪めて思い通りにする。なんて吐き気を催す邪悪だろうか。 けどそれは自ら望んで踏み出した修羅の道なのだ。 起承転結は事の発端であるセイヴァーたちへの当て付けのように、歪な笑みを浮かべて主命を頂戴する。 「イエス・ユア・マジェスティ」 返事は、なかった。 自分のために死ねと命じたサーヴァントに一切の謝罪も労りの言葉もなく、最高の友だちPは全速力で戦場を後にする。 その様を悲しく思う資格も寂しく感じる権利も今の起承転結にはなかった。 あるのはマスターが逃げ切るまでの時間をなんとしてでも稼ぐという義務のみ。 起承転結は未だ大地に呑まれたままの敵手へと語りかける。 「待たせたね」 「構わんよ。別れのシーンを邪魔するほど、我々は無粋ではないさ」 轟音と共に裂け目を覆っていた氷が砕け散り、きらきらと乱反射する光を浴びて漆黒の主従が地の底より帰還する。 やはり、この敵相手では地割れも極低温も足止めにさえならないか。 いつでも出てこれたであろうに今の今まで大人しくしていたのは、本人たちが言うように単に空気を読んでくれていただけなのだろう。 セイヴァ―たちは低温対策に使っていたらしいホッカイロと栄養ドリンクの空き瓶をわざわざゴミ箱に分別して捨てる余裕さえ見せている。 舐めやがってと思う気持ちがないわけではない。 ただ、どこまでもリレー書き手である彼らの矜持こそが起承転結が付け入ることのできる唯一の隙だ。 絶大なチートを誇ろうとも、書き手としてリレーを求める限り、無茶苦茶な展開を押し付けてはくるまい。 リレーに長けているからこそ、戦力差の激しい今からの戦いにおいても、リレー初心者のこちらに合わせてくれるはずだ。 そのリレー書き手としての優秀さを最大限に利用して、非リレー書き手としての傍若無人さで自らの願いを押し通すしかない。 願い――最高の友だちPとの再会。 自分は彼女の友情を踏みにじる最悪なことをした。謝って許してもらえるとは限らない。 それでも、自分が捻じ曲げてしまった少女を、元に戻す責任がある。 “心機一転”は不可逆な能力ではないのだ。 もう一度能力を行使すればスタンスが再度反転し、結果一周りすることになり、元に戻るのだ。 起承転結の姿が、セーラー服の少女へと変わる。 鈴型髪留めのおさげを翻すその姿の元ネタこそ、四字熟語ロワにおける“心機一転”の被害者で。 正気に戻った少女が、反転していた間の自らの行いをどれほど引きずったかを知るからこそ、起承転結は最高の友だちPをこのままにしておけない。 自分でやっておきながら虫のいい話だとは理解している。 それがどうした。 本当は義務だとか、責任だとか、そんなのはどうでもいい。 自分がそうしたいから。自分が最高の友だちPのサーヴァントでありたいから。 失敗を恐れず。危険も恐れず。勇ましく気力を振り絞って、最強の敵へと立ち向かう。 「《りんりんソード》ッ!!」 二度と交わらないなんて運命は、力ずくでこじ開ける! こうして起承転結は剣を手にし、結末の決まりきった戦いへと挑む。 勇気一つを友にして。 【一日目 午前 TV局付近】 【起承転結(◆YOtBuxuP4U)@四字熟語バトルロワイアル】 [状態]健康、勇気凛々、ステータスアップ [装備]凛々ソード@四字熟語ロワ [道具]なし [所持金]大判小判 [思考・状況] 基本行動方針:非リレーに回帰してでもマスターを守る 1.マスターが逃げれるよう時間を稼ぐ 2.相手のリレー書き手故の心理を利用して優位に立ちたい [備考] ギアスをかけられているかもしれません。 『連鎖反応』内の戦況に関する情報を得ました。あくまでも視覚情報のみです。 【最高の友達P(◆j1Wv59wPk2)@モバマス・ロワイアル】 [状態]心機一転 [令呪]残り二角 [装備]ピストルクロスボウ [道具]なし [所持金]アイマス 10周年ライブで使い果たした [思考・状況] 基本行動方針:友だちを利用して一人生き延びる(友達の元へ帰る。そのためならばなんだってする) 1.セイヴァーたちから逃げる 2.心機一転が死んだ時用に盾になる新しいサーヴァントを探しておきたい 3.(……早く……向かわないと………) 4.(……起承転結の……所、に………) 5.(私……謝って………) 6.(もう、一度…………――――) 【 零に還りし人間 セイヴァー(◆l3N27G/bJU)@二次キャラ聖杯戦争】 [状態]“ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア”(仮面なしのゼロ)、魔力消費(大) [令呪]残り二角 [装備]槍王イルバーン@私の救世主さま、転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)@Fate/EXTRA [道具]なし [所持金]ルルーシュなので沢山ある [思考・状況] 基本行動方針:ジョーカー。初代二次聖杯を終わらせた者として書き手聖杯戦争を加速させることに尽くす 1.起承転結と友達になる [備考] ※ザ・ゼロ、及びザ・ギアスをそれぞれの右と左目に宿しています。ハドロン砲ももちろん発射できます。 【バーサーカー(よっみー)@書き手ロワ2nd】 [状態]魔力消費(中) [装備]永遠神剣第一位『空気』@書き手ロワ2nd [道具]なし [所持金]書き手2エピローグ的にお金は持ち込めていないため無一文 [思考・状況] 基本行動方針:ジョーカー。かつての書き手ロワ書き手として書き手聖杯戦争を加速させることに尽くす。 1.遅くなったけど四字熟語ロワ完結おめでとう! [備考] ※宝具の力で永遠神剣を投影したり、令呪の助けさえあればメタにも干渉できるようです。 狂化していますが経験と本能で書き手を察せれます。 029:■■■■■、■■ 投下順に読む 031:[[]] 024:連鎖反応 最高の友達P :[[]] 024:連鎖反応 起承転結 :[[]] 024:連鎖反応 ≪零に還りし人間≫セイヴァー :[[]] 024:連鎖反応 よっみー :[[]] ▲上へ戻る
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613 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/12/11(月) 04 24 20 踏み出された巨大な身体。 ……体格の差から考えて真っ向勝負を行うことは難しいだろう。 仮に行えたとしても消耗は激しく、大魔砲での攻撃はしにくいままとなるだろう。 ならば足を止める事……足を止めて時間を稼ぎ、再度砲撃して撃破する。 そう決心し、初撃と同時に右足を踏み出す。 数メートルの距離から繰り出される左の鎖剣を展開された刃で跳ね返し、その方向に合わせて死角へ回り込むように走る。 だが死角へは回り込めない。 戻り始める鎖剣の間を縫うように右の鎖剣が繰り出される。 だがさらにその一撃を弾き、同時に首を狙う。 この一撃を無理に受ければ隙ができる。 二人は同時にそう判断し、その攻撃は空を切る。 「身軽な……!」 鮮やかなバックステップ。 続けて繰り出そうとした一撃は開いた間合いに阻まれる。 そしてそう判断するまで僅かな隙の合間に再び鎖剣が閃く。 「くっ……」 近接用のバルディッシュと左右の鎖剣。 直接ぶつかり合えば威力は僅かにハーケンモードのバルディッシュが上であろう。 だが筋力を含めた多くの身体能力、そしてそこから生まれる鎖剣の戦術性の高さはそれを補い、それどころか凌駕するだろう。 「でも……負けない!」 フェイトの視線の先はセイバーの後方。 一つだけ残しておいたディバインスフィア。 そこから一発だけ撃ち出される光弾。 狙うのは頭部。 ダメージではなく視界を奪うことにある。 フェイトが踏み出し、一気に接近する。 「ぬっ!」 後方から撃ち出された光弾を直撃されて視界が消える。 振り上げられた両手の鎖剣が振り下ろされ、轟音と衝撃波が発生する。 「くっ……」 サイドステップで回避し、僅かに体勢を崩しながらも更に接近する。 「はああっ!」 狙うのは足。 大振りの一撃は、右足の大腿筋を切断した。 『……よし!』 フェイトの心に発生した僅かな達成感、心の緩み。 足の筋肉を切断されたセイバーの口元が歪む。 「……捕らえたぞ」 フェイトが気付いたとき、その足には鎖が絡みついていた。 影ごと吹き飛ばされたコスタスが地面に倒れている。 激しく咳き込み、それでもなお闘志は衰えていない。 「やるな……本当にやる……只者じゃないとは思っていたが、所詮少女、これほどとは思わなかった……」 「……諦めてください、人に迷惑を掛けるような事を追いかけるのは、ここまでです」 レイジングハートの先端を向けたまま、声を掛ける。 「嫌だね……俺は、死ぬまで止まらないぜ?」 だから、止めたければ殺せと、少女を逆に脅す。 「そんな……」 なのはに『殺す』という選択肢は存在しない。 「……やはり少女だな、本当に甘い」 転がっているカラシニコフを手に取り、装填された残弾を迷いもなく発射する。 Protection だが至近距離から発射されたそれは、唯の一発もなのはに命中することはない。 「……無駄です、レイジングハートはその攻撃を完全に覚えました」 如何に弾速は早かろうと、銃弾による攻撃は直線的だ。 まして魔術的な効力もない武装ではレイジングハートには通じない。 「なるほど……自動防御までついてるのか、その武装は」 諦めたように銃器を捨てる。 「まして女子供を直接殴るなんてしたくはないからな」 そう言って笑う。 その表情はどこか優しさを感じさせる。 彼女が聞かされた『聖杯のために人を殺す』存在のイメージとは異なっている。 それは彼女の『悪』という存在へのイメージ力の不足によるものだが、大凡間違っては居ない物だ。 だが、そうなってしまった理由は存在するはずだ。 それを知りたいと思った。 そして、救いたいと思った。 引き際:「次は負けぬ、絶対に負けぬ」 隠し球:「だったら、これはどうかね?」 糾える縄の如く:「ククク……ならば……」
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太陽は闇に葬られん◆A23CJmo9LE 月の見えない天井。 無機質な空間。 戦場から離れた静寂で男は佇む。 「不動明……あの姿は一体……?」 そう呟くと男、天戯弥勒は右眼を覆うように手をやった。 その掌の下で目線を何かを探すように様々に走らせる。 そしてあるところに視点を定め、目当てのものを見つけて納得の声を上げる。 「なるほど、そういうことか。逆光運河・創世光年を成さず、人類を進化させようとするとそういう真似をするのか、あの獣は」 「あの正体を知っているのか」 新たに一人、男が姿を見せる。 先刻あった不意の来客と同じ、金色の髪に容姿端麗な存在がどこからともなく現れたのに驚きもせず、言い咎めることもなく弥勒は問いに答える。 「ああ、今答えを見たところだ」 「聞かせてほしい」 右眼から手を放し、疼くように少しだけ表情を歪めると、その眼で見たものの解説を始めた。 それを暗闇から現れた男、飛鳥了は静かに傾聴する。 「あれは魔神柱というものらしい。ゲーティアに記された72柱の悪魔の名を冠する使い魔だ。アモンはその中でも高名な悪魔だろう?」 「私の知るアモンの姿はあのような醜悪な肉の柱ではなかったが……」 グリーフシードに満ちたケイオスタイドによる影響とはいえ、明の善性があれば魂まで汚濁することはないと思っていた。 ルシファーと並ぶ強壮なる悪魔アモンの肉体が変質するとも了には思えなかった。 「私たちが今いる世界とは基準を異にする編纂事象では魔術王が人類すべてが進化させようとしていた。 その結果人類の大半は悪魔族(デーモン)へと転じた……不動明は獣魔族(ベスティア)アモンと呼ばれる悪魔となった。 人が名付ける前から悪魔であった真性悪魔、デーモン族。人が人であるがゆえに切り捨てることの叶わない人類悪。この二つは極めて近しい概念だ。 そしてサーヴァントとは意思を持つ存在を使い魔という術式に落とし込むもの。 魔神柱というのは魔術王の保有する術式が意思をもったものらしい。 二つの近似する概念に加え、並行世界の魔術王とアモンの繋がりゆえに魔神柱へと姿を変えてしまった、というところだろう。些かと言わず外法な地だからな、ここは」 弥勒のつらつらと語る魔神柱というものの正体に理解はしかねるも納得はする了。 肉体はともかく魂のラベルが無事ならばひとまずは目的を達することができると焦燥を抑える。 「情報に感謝する。私(ルイ)にも伝えておくとしよう……しかし今更だが超能力者(サイキッカー)にしては魔術に精通しているな。 根源にでもつながったか?私以上の知識とは」 「詳しいわけじゃない。答えを見た、と言ったろう」 そう言いながら弥勒はまた右眼を抑えるように右手を伸ばす。 了はその手の下を探るように見つめ、ゆっくりと答えを出す。 「魔眼か?いや、まさか千里眼?生まれつきではないな。どうやって手に入れたんだそんな代物」 了の顔に珍しく驚きが浮かぶ。 その珍しい表情を可笑しそうに見返し、弥勒はその眼の出どころを喋り始めた。 「生命樹信仰というのは様々な神話に様々な名で存在する。 ある神話では、キスカヌ。別の神話では、娑羅双樹。また別の神話では、ゴフェル。あるいは、セフィロトにユグドラシル。 これらは同一の元型を持つものであり、俺のPSI、そして魂の『起源』にも通ずるらしい。 生命の樹は世界を支え、あるいは繋ぐ……流れてきたのさ、世界から俺に向けて情報が。 世界樹ユグドラシルの根元に繋がる命の泉がデンマークにあることを、俺はセフィロトを通じて知ることができた」 世界樹ユグドラシル。命の泉。 それは北欧神話に語られる大神が智慧を得た舞台として有名だ。 ルーン魔術の開祖と言われる大神は無窮の叡智の代償を払い、世界を見通す神となった。 払った代償は、自らの命と、そして泉に捧げた右眼。そう、つまり…… 「ミミルの泉からオティヌスの右眼を回収したのか。 数多の並行世界を生み出すが故に、その並行世界を俯瞰する規格外の千里眼を持つ『魔神』……グランドキャスター、オティヌス。 捨てられたその眼に未だ機能が残っていたとは驚かせてくれる。 ある意味では『宝石』の魔眼より扱いの難しい代物をよくその身に宿せたものだ」 身体に依存する千里眼は宿主が死しても、宿主のもとを離れても機能を続ける。 オティヌスの眼が千里眼となった時点で、泉に捨てた眼もまたグランドキャスターの資格である千里眼へと性質を変えていたのだ。 「イルミナの移植に比べればなんてことはない……といっても俺はその実態がどんなものかは知らないが。ウラヌスには感謝しかないよ」 創造主(クリエイター)と呼ばれる天才サイキッカーの少女が人を人ならざるものに処置できる技能があった。 その力を借り右眼を霊的に移植すれば、あとは起源の類似する生命の樹の保持者である弥勒になら規格外の千里眼もある程度は使いこなすことができた。 あらゆる並行世界を見渡し、テレホンカードを手にする者を見極め、今も時折会場での戦端に目を配っている。 「並行世界を見渡す千里眼を、たかだか聖杯戦争の監視に使うなど贅沢な」 「俺も、お前ももとより聖杯など欲していまい。心底それを望んでいるのが神に最も近いマンセマットなのは何とも皮肉なものだ。 俺たちの目的は聖杯戦争のその先なのだから、そのためならば魔神の眼も相応しいと言える」 「とはいえ人の身でその眼は扱いきれるものではないだろう。器が足りない。私の知る限りその眼を持つものはどれも純潔の人間ではなかったはずだ」 英雄王ギルガメッシュ。魔術王ソロモン。キングメイカーことマーリン。 神の血や知識、あるいは夢魔の血が混ざった人外でもなくば脳髄や神経が焼き切れてもおかしくない。 「扱えてないさ。見えるものすべてをまともに受け止めていたら今頃俺は廃人だ。 ……さっきまで垣根帝督がやっていたあれと似たようなものだ。リスク処理というやつだな。 脳が焼ける前に俺の手で視神経をレイラインごと切ることでまばたきの代わりにしている。視点の切り替えも同様だ」 そう言っている間にも右眼の視神経を焼き切り、そして生命の樹(セフィロト)によって回復する。 まばたき程度の気軽さで訪れるその激痛に苛まれても、弥勒は少し疼いたくらいの反応で右手を目にやり不敵に笑みを浮かべるだけ。 「もちろん使いこなすための腹案はある。それが俺の目的のために必要なことなのだからな」 そう言いながら保管したエレン・イェーガーのもとへと歩み寄る。 「肉体のスペックを向上させる必要がある。死徒化などではまるで足りない……この身に神を、オティヌス自信を混ぜ、疑似サーヴァントになることだ。 もちろんそのままでは神の意識に俺の人格は呑まれ、僅かな思念を遺す程度になってしまうだろう。 必要なのはエレン・イェーガーに宿る『始祖の巨人』の力だ。巨人を掌握する力を秘めたそれを奪い取ることで、ユミルの継嗣である半神半巨人のオティヌスの意思をねじ伏せる。 そうすることで、俺はオティヌスの疑似サーヴァントとなっても人格を侵されることなく俺の意思を保つことができるだろう」 「君は完全にオティヌスを降ろすつもりなのか……?確かに神霊であるあの女の力を使いこなすにはそれしかないだろうが、そうまでするか」 冠位の魔術師の、神霊の力を手にしなければならないことなどそうはない。 その欲深さと、何より血走った眼でエレンを睨む弥勒の凄味には了も多少なり感心する。 「この眼を通じて知ったことがある。 俺たちの生きる宇宙は異なる展開を見せる並行世界を許容する。しかし際限なく並行世界を発生させ続けると宇宙の寿命が尽きてしまう。 故に世界は選択し、記録し、収束する。『もっとも強く、安定したルート』から外れた世界を伐採し、エネルギーの消費を抑えるのだ。 消えゆく世界を『剪定事象』と呼び、基幹となる世界を『編纂事象』と呼ぶ」 弥勒の眼付が変わった。 千里眼を得て、神の視点に立ったことで人間味が薄れている。 「ふむ。魔術師の言うところの『人理』のことか」 「そうだ。人理に記録された事象はいかなる過程を経ようと覆ることはない。 神代のそれでもなお足りない、規格外の魔術師でなくば人理を焼却し、それを否定することはできない」 そう。 歴史を変える偉業を成すのは容易いことではないのだと、神の眼を得て思い知らされた。 世界を騙した、姉と宿敵がどれほどのことをしていたのかを改めて弥勒は知ったのだ。 そして、自らがそれに挑むことがどれほどの苦行であるかを。 「なるほど、そうか。『主神の槍(グングニル)』により世界を作り変える魔神(グランドキャスター)オティヌスならば人理焼却も成ると考えたか。しかし疑似サーヴァント程度でそこまでできるかどうか」 「かまわんさ。何も人類史すべてを否定しようというわけじゃあない。そんなものは獣の所業だ。 俺はほんの少し現代を守り、未来を変えることができればそれでいい」 弥勒の眼に少しづつ人間性が戻る。 千里眼を通じて見るのではなく、過去を振り返るとき彼は紛れもなく個人になっていた。 その様子に少しだけ了は疑問を覚えた。 「オティヌスの千里眼は未来視にまで至るのか?」 「さあな。本来のものならどうか知らんが、少なくとも俺は並行世界(となり)を覗き見るのが精いっぱいだよ」 「ならどうして君は固定された未来を知った?」 質問を受けると弥勒は複雑な表情で懐から赤いテレホンカードを取り出した。 懐かしむようで、誇らしげで、しかし悲しげでもある。 「姉さんと…夜科アゲハが教えてくれたのさ。10年後の未来と、それに至るまでの戦いの歴史を」 想起する。 姉と宿敵が届けてくれたメッセージを。 自ら紡いだその結末を。 「10年後、この地球が地球外の存在によって滅ぶ未来を見た」 思い返すのは自らの愚かさとその罪。 「俺の呼び寄せてしまったクァト・ネヴァスの手によって地球上の生命体の大半は絶滅の危機に陥る。 その未来は第一波である約束の涙を手にしたミスラを俺と夜科アゲハの手によって殺し、消し去ったはずだが。 それはおそらく人理に記録されている。数多の世界で似たような事象を観測したからな」 自ら引き起こしてしまった事件は幕を下ろした、はずだ。 そして同じような事件は、全く異なる地でも起きていたのを知っている。 弥勒は再び右眼を抑えるようにし、そしてかつて見た世界の記憶を手繰り寄せる。 「纏流子の刃で原初生命繊維は断ち切られた。 鹿目まどかの願いが絶望の魔女を救済した。 伊里野加奈の尽力によって異星人の侵略は防がれた。 現時点で地球は宙よりの侵略者に敗北することはないと人理に刻まれたはずだ。だが、10年後はどうかは……不安材料も多い」 あらゆる世界の歴史に刻まれている。 地球は外宇宙の存在になど負けはしないと。 しかし、弥勒は知っている。10年後の未来に外宇宙からの侵略者の本隊が訪れる可能性があることを。 ミスラによりウロボロスが呼ばれるように、何かが地球に訪れる危険がある。 「人吉善吉の過ごす世界で鶴喰梟という男が生命活動を停止した場合、その男の遺言により月が地球に落ちることになっている。 インキュベーターという地球外知性体の魔の手に未だ脅かされる世界もある。 直近の事象としてはそれだが……ほぼすべての世界に共通して見られる『捕食遊星』の伝説が気になる。 ヴェルバーと呼ばれるそれは月の干渉がなければ地球を訪れ、滅ぼす……あたかも『ウロボロス』のようにな」 地球が救われるのが人理に刻まれたとしても、10年後の滅びまでも記録されているかもしれない。 その因子は様々な世界に転がっていた。 そしてもう未来を見ることの叶わない弥勒ではその可能性を人並みに予測することしかできない。 「もし君の見た未来が人理に記録されていたならば地球が彼方からの来訪者によって滅ぼされる、と。 それを防ぐために魔神の力を手にしようとは意外と人のいいところがある」 「わざわざ否定はしないが。あくまでそれは二の次だ」 弥勒の眼に映っているのは、世界を滅ぼしてでも救いたいものだった。弥勒を人間足らしめている存在だった。 世界の危機よりもその危機の方がよほど重要だ。 「現代において5本の指に入るだろうサイキッカー、八雲祭という女がいた。 そいつは明らかに格下である俺の部下の一人の毒を受け、ある歴史ではその毒による弱体化が原因で死に至っている。 あの女の服毒はあらゆる世界で観測される、人理に記録された不変の歴史だ」 語るのは人理に刻まれた不変の現象。 赤いテレホンカードを通じて知った事象においても、歴史を変えることはできないと一人の女の危機を通じて世界は知らしめてきた。 「それがいかなる歴史を固定しているのか。俺の生存か、それに付随するクァト・ネヴァスの襲来か。 その答えは分からないが、歴史においては個人に発生する事象もまた記録され……何より観測された死は絶対となりえる」 いかなる歴史をたどろうと滅びを迎えると決まったものは滅びるらしい。 ブリテンという一国であろうと。ムーンセルという規格外の演算器であっても。 ならばもちろん数人の人間の死など容易く世界はもたらしてしまうだろう。 「なるほど。特異点と呼ばれる歴史のシミであっても死を記録されたなら、特異点修正後もその死の運命は覆されない。 多少時期にずれは生じるだろうが、人理焼却という異常事態を引き起こさない限り必ず死に至るだろう。 ……『赤いテレホンカード』の力で未来を変えたとしても、その未来で死んだものはやはり死ぬ可能性が高い」 「ドルキ。ウラヌス。ヴィーゴ。シャイナ。ジュナス。そして俺にグラナ。クァト・ネヴァスの訪れた未来においてW.I.S.Eは殆ど全滅だ。 その未来にも多少のショックは受けたが……この眼を通じて霊子記録固定帯(クォンタム・タイムロック)のことを知ったときはその比じゃなかった」 10年以内に自分も含めてほとんどの仲間が命を落とす。 これが歴史に記録されているとすれば、それは地獄などというものではない。 「かつての俺の計画が原因で世界が滅ぶ。それが必要ならばまあいい。 だが仲間と共に過ごす世界を求めておいて、その結果が仲間の死など受け入れられるわけがない。 ……あいつらが10年前後で必ず死にゆく世界など認めるものか」 そう、弥勒は一人漏らす。 一人たりとも仲間の手は借りず、悪魔や天使に手を伸ばしてまで彼は仲間を巻き込むのを避けた。 聖杯戦争などという大事に巻き込んでは、その過程で命を落としてもおかしくはないのだから。 10年以内に死ぬという歴史をここで確定させてしまうわけにはいかないのだから。 世界が滅んでも別に構いはしない。その過程で仲間が消えゆくのは我慢ならない。 弥勒のその意識は、魔王の思う混沌とした世界を生きるに相応しい強く、倫理に囚われない自由なものだった。 その凄烈な、新たな魔王かあるいは獣と言える在り方に了は笑みを深めた。 「英霊を喚ぶ聖杯戦争という形をとり、マンセマットと私のような人外も交えて、人理焼却というとびっきりの人類悪を成そうとする。 明が並行世界の因果を引き寄せてしまったのを見るに随分術式を歪めたものだ。 もしやティアマトを倒したヒトナリや、原初への『回帰』を願う私、それに『愛欲』の果てを知ったほむらは呼び水で、グランドクラスを召喚するために原点の決戦術式・英霊召喚に近づけたな? 悪魔染みた発想だ。全く感服するよ、弥勒」 「お前の目的とかち合うことはないと確信できたか?」 「ああ。明は狙い通りソウルジェムに満ちたケイオスタイドを啜り、絶望の果てに受肉した。あれなら英霊の座でなくヴラヴァやシレーヌの待つ地獄へと送ることができる。 巨人族やデビルマンの堕ちた地獄で神々の悪辣さをその眼で確かめてくれるだろう」 多少なり気に食わないことはあるが、それが最善の道であると了は砂をかんだような表情で堪える。 「同胞を地獄送りとは大層な友情だな」 「なに、問題はないさ。ケルベロスはおろか闇の帝王ハデスだろうと明には敵わないだろうからね。 ……さて、俺はそろそろお暇しよう。私(ルイ)とともに明のひとまずの最期を見届けなくては。それと、ついでにマンセマットの末路も冷やかしておこうか」 そう言うと口元に嗤いを浮かべて、闇へと了は去っていく。 そうして空間には一人弥勒だけが残され、数秒の間耳に痛いほどの沈黙が下りた。 そこへ銃声に近い炸裂音が響き、静寂を切り裂く。 炸裂音と共にどこからか放たれた強大な弾丸が弥勒を貫き、その肉体は衝撃で宙を舞う。 胸元に空いた風穴、甚大な出血、誰が見ても天戯弥勒は間違いなく死んだと思うだろう。 銃声の主もそう考えて、暗闇から姿を見せる。 その正体は女神ノルン。 大天使マンセマットの同胞であり、此度の聖杯戦争においてはその能力で時間操作に制限を課す役割を果たしていた女神である。 「まさか、アレは…ルシファーが噛んでいたとは」 弥勒の死体を確かめるノルンの口から言葉が漏れる。 「聖柱は顕現し、もはや我らの計画が大詰めだというのに――」 「あいつや俺に邪魔されるわけにはいかない、か?」 ノルンの言葉を継ぐように弥勒の亡骸…だったはずのものから声が放たれた。 「今のはグランドタックだな。神樹ユグドラシルの放つ、至高の魔弾に手を伸ばさんとした強力な銃撃。 ここまで死にかけたのはグラナの天墜をまともに浴びて以来かな。大したものだよ」 エレン・イェーガーの死体から光る枝が伸びて、その枝に触れたところから弥勒の傷が癒えていく。 エレンの肉体も死んでいるとは思えないような瑞々しさを保っていたが、その生命力を奪うように、弥勒の傷が癒えるほどに逆にエレンの体は朽ちていく。 最後に自重でエレンの体が枯れ枝のように折れると、弥勒の体は完全に癒え、再び堂々と立ち上がった。 つい先ほどまで間違いなく死んでいた男の復活に、何よりその見覚えのある枝にノルンも瞠目する。 「生命の樹(セフィロト)“王国(マルクト)”……どうしたノルン?お前の中の一人はワルキューレだろう?死者が立ち上がり戦うなど幾度も見てきたはずだ。 それともこの生命の樹(セフィロト)に見覚えがあるか?かつてウルズの泉の水でお前が育てていた生命の樹(ユグドラシル)に似ているのが驚きか?」 ニンゲンの戯言と切って捨てるように再び銃撃を構える。 次の瞬間に銃声 「ひれ伏せ」 ではなく弥勒の発したその命令が響き、その通りにノルンは突如重力が増したかのように倒れ、『ひれ伏す』。 令呪で命令されたサーヴァントのように意思に反した行動を強制され、ノルンの脳裏に次々と屈辱が、疑問が駆け巡る。 人間風情が。おのれ、何をした。動けるようになったなら即座に縊り殺してくれる。 女神の美しいかんばせにその悪意を存分に浮かべ弥勒を睨むが、睨まれた方は涼しい顔でそれを受け流す。 「なぜ?と聞きたそうだから答えてやろう。エレン・イェーガーのおかげだよ。彼に宿った『座標』の力をものにしたのさ。 あらゆる巨人の繋がる空間を超越した道の交差点が今の俺の中にはある」 生命の樹(セフィロト)によって生命を奪われ、枯れ落ちたエレンの亡骸を背後に弥勒が歩み、ノルンに近づく。 「巨人の力を宿したユミルの民が命を落とした時、宿った巨人はどこかのユミルの民に転生する。 ……エレン・イェーガーが死ねばその身に宿った二つの巨人の力は別の誰かのもとへと移ってしまう。奪うには生かしたまま喰らわねばならない」 崩れたエレンの亡骸が灰へと転じた。 「この世界で死んだ者は灰へと帰る。転じて言うならば、灰になっていないものは世界の認識において死んでいないということだ。 セフィロトを通じて俺とパスを繋ぎ、命を共融している間は奴に巨人の力は宿り続けた……そして先ほど、そのパスを通じてエレン・イェーガーの命を喰らった。 今の私…俺は『進撃の巨人』と『始祖の巨人』の継承者だ。わかるか、ノルン?巨人族の三姉妹よりなる女神よ」 「座標の力が、私を縛っていると…!?」 ノルンを形成するのは幾柱かの女神の要素である。 特にその頂点の三姉妹、現在過去未来を司る巨人族の女神のことを指す。 彼女の道もまた、どこかで『座標』に通じているらしい。 「俺の右眼はオティヌス…ユミルの一族である魔神オーディンのものだ。巨人の王ユミルの系譜の力に触れていれば片鱗とはいえ『始祖の巨人』の力を振るうことができる。どうやら実験は成功したな」 「私で、力を試したというのか……!」 「その通りだ」 ノルンの目と鼻の先に立ち、弥勒は見下すようにして掌からセフィロトを展開する。 「最期になるがノルン。お前には感謝している。 ユグドラシルに一度奪われたその力を再び身に宿したため、お前はただでさえ深い世界樹(ユグドラシル)との繋がりをより濃くすることとなった。 それがあったからこそ、ユグドラシルは輝きを取り戻し、俺のセフィロトへ居場所を知らせてくれたのだろう。オティヌスの眼を見つけることができたのはお前のおかげだ。 そしてセフィロトとユグドラシルの繋がりがあったからこそ、俺はそこへ千里眼を向けることでお前とマンセマットを発見できた。その繋がりにテレパスを送ることもな。 この聖杯戦争の開催にお前という存在は欠かせなかった。そして、俺の目的の終結のためにもお前の存在は欠かせない」 掌から出されたセフィロトが束ねられ、強靭な槍のようになる。 「俺に跪き、糧となって死ね。ノルン」 そしてその槍が、何もできず跪くノルンを貫く。 うめき声ひとつあげる間もなくノルンもまた灰へと帰る。 ……その灰の山に一つ、残るものがあった。弥勒はそれを手に取り、大切そうに懐にしまう。 「ユグドラシルの枝。お前が宿した力の結晶、タダノ風に言うならフォルマか。思ったより小さいな。こんな僅かな傷から世界樹が枯れるとは神秘の衰退とは恐ろしいものだ。 しかし小さい木片しか得られなかったな。これでは槍にするには少し足りないか?」 やはりスペアに手を出すか、とつぶやき、改め得て千里眼で会場に目をやる。 視界にまず飛び込むのは二つの戦場。 聖なる柱と向き合う、人間と悪魔。 魔なる柱を向きあう、人間と悪魔を宿すものたち。 それを取り巻く、戦場の空気。 「綺麗だ」 その大気はすでにPSI粒子以外にも様々なものに侵されている。 未元物質であり、テレズマであり、スタンドエネルギーであり、マッカであり、ケイオスタイドであり、心象風景そのものでもある。 「あらゆる世界のあらゆる法則が入り乱れ戦うことで、空気に魔力(マナ)が満ちていく。 かつて神が闊歩した時代の空気は、こんなふうに輝いて見えたんだろうな……これならオティヌスも馴染むだろう」 場が整いつつあることを確かめ、今度は自らの胸に手を当てる。 「必要なものは『座標』である。巨人を従える始祖の巨人の力でもってオティヌスの意思をねじ伏せる」 ゆっくりと深呼吸をして、そこに力があると認識を深める。 ノルンが屈したその力は本物だと改めて確信する。 「オティヌスの右眼を宿していれば巨人を操る力を行使できることは確信できた。 ノルンを失い、暁美ほむらの枷は外れてしまったが、もはや佳境だ。夜明けごろには時間素行までできるようになってしまうかもしれないが、それも些末事」 再び戦場に意識を向ける。 今度は大気でなく、現れた規格外の怪物二柱に絞って。 「魔神柱に聖柱とはずいぶん規格外ではあるが、英霊と人間の合体という実例もこの眼で観測できた。 召喚はまだしも合体には多少の不安があったが、あの分なら俺にもさほど難しくはなさそうだ」 マンセマットの術式は観察できた。デビルマンの合体も見た。 サーヴァントを現世にエーテルで器を与えるのではなく、天戯弥勒という器に流し込み、それによって器自体も変質させればよいのだ。 すでに千里眼を宿し、変質しつつある体にオティヌスは馴染むはずだと自分に言い聞かせる。 「巨人を抑えるのに最も適したカタチの魔術回路も奪った。この手だけは守り切れば、抑えることができる」 今度は千里眼の先でなく、右手の甲に目をやる。 そこにあるのは自由の翼。エレン・イェーガーに刻まれていた令呪を巨人の力ごと奪ったのだ。 巨人を制するのに彼のもの以上に優れたマスターはいないだろうと、その魔術回路ごと奪い取った。 ……オティヌスを抑えるための準備は重ねている。 「必要なものは礼装である。魔神の振るった『槍』、世界樹ユグドラシルの枝……ゴフェルと呼ばれる木片を。そして、竜を従える『弩』を」 あとは呼び寄せるだけ。 そのための触媒をノルンを殺め、手にした。 不足ならば他にも候補は用意している。 左眼に体の随所から発生させた、世界樹(セフィロト)と名付けたPSIが映る。 そして右眼に映る戦場の景色を移動させていく。 まず映ったのはアーチャーのサーヴァント、穹が戦地に遺した矢が突き刺さる公園だった。 そしてすぐに千里眼に見える景色を切り替える。 グングニルの名を冠する槍を持つランサーのサーヴァント、レミリア・スカーレットを彼方より見やる。 そしてとある世界において『主神の槍(グングニル)』の材料となった、生きるゴフェルともいえる存在……今や聖柱と呼ばれる存在になったテイトクを睨みつける。 材料はある。 あとは召喚に適した環境と、肉体のピークのタイミング。 「必要なものは引力である。月と地球の引力が条件を満たすその時に、俺はオティヌスをこの身に宿す疑似サーヴァントとなる」 そしてまた、千里眼に映る世界を切り替える。 右眼の視界に捉えたのはこの地で誰より因縁深いサイキッカーだった。 太陽(みろく)の対となる、月(アゲハ)の姿。 「生きてこの世界を見届けろといったな、夜科アゲハ。 結局俺の作る世界は破壊の果てにあるようだ。世界が俺や仲間を殺すなら、俺はその世界を焼き尽くす。 俺の選んだ道はお前の目にどう映る?」 数多の剪定事象で殺し殺され、一度だけ共通の敵を見据えた男。 ドルキ以外にはおそらく唯一自分と同じ高みに至り、同じ世界を異なる見方で捉えていた男。 「世界をまわり、仲間を集め、草の冠から始めるつもりだったんだよ。 それが、集めた仲間が世界に殺されるのを防ぎたければ冠位(グランドキャスター)の力が必要なんてな。 世界樹の力を結集した、最高級の草の冠を用意する羽目になってしまった。 姉さんの言いたかったのはそういうものじゃないんだろうが……10年経とうと、その成れの果てを知ろうと俺にはやはりこれしかできないらしい」 「月は近づく。天国の時は近い……さて。オティヌスの触媒でもある、弩と木片の回収に行かねばな」 【天戯弥勒@PSYREN-サイレン-】 [状態]魔力(PSI)消費(小)、『始祖の巨人』及び『進撃の巨人』吸収 [令呪]三画 [装備]オティヌスの右眼(EXランクの千里眼) [道具]フォルマ:世界樹の木片 [思考・状況] 基本行動方針:オティヌスの疑似サーヴァントとなり、人理に刻まれた自身と仲間の死を歴史から焼却する 1.『槍』と『弩』を回収するため穹の遺品、レミリア、テイトクのいずれかのもとへ向かう 2.オティヌスを召喚する [備考] ※エレンの死体をセフィロトを通じて喰らいました。『始祖の巨人』、『進撃の巨人』の力を一部得ています。 【飛鳥了@デビルマン】 [状態]健康 [令呪]??? [装備]??? [道具]??? [思考・状況] 基本行動方針:神々との闘争に勝利し、デーモンの天下を 1.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい 2.神々との闘争に備えて準備。その方策として受肉した明を地獄に送る 3.必要に応じて参加者にも主催にも介入する 4.戦力増強のためルイと子を産むことも考える [備考] ※ルシファーの男性としての面を強く顕現した分身です。 両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。 [全体備考] ※ノルンが死亡しました。それにより暁美ほむらの時間操作の制限がなくなっています。弥勒の見立てでは夜明けごろには時間遡行も可能と予想しています。 BACK NEXT 065-b 魔なる柱雷のごとく出で 投下順 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 057-b 翼をください 天戯弥勒 飛鳥了